大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
エンドポイントAIの動向(3/3 ページ)
ほぼ同程度のコストで、画像処理や振動解析など特定用途向けAIを実現する方向に向かったのが、Lattice SemiconductorやQuickLogicといった小型FPGAベンダーである。Lattice Semiconductorの場合、2018年5月にLattice SensAIと呼ばれるAI向けフレームワークを発表した(図5)。このSensAIは同社のECP5とiCE40 UltraPlusの2種類のFPGAに対応するものだが、iCE40 UltraPlusは最大でも5K LUTという非常に小さなFPGAで、量産価格も1ドルほどである。当然フルスペックの画像認識は無理だし、Networkも1bitのBNN(Binary Neural Network)が前提であるが、この程度であっても人間の顔認識(つまり人間の顔か否か)程度であればそれなりの速度で動作し、しかも消費電力は1mWほどとされる。「そんな精度で用途があるのか?」と疑問を持ちそうだが、例えば自動販売機に組み込み、販売機の前に人が立ったと認識したら照明をOnにする、なんて使い方に利用できるという話である。
同様な戦略を見せるのがQuickLogicだ。同社の場合、PolarPro 3というFPGAを提供しているが、これは1KそこそこのLUTしか搭載していない非常に小さな製品で、さすがにこの上ではBNNでも動作は難しい。ただこれと並行して同社はEOS S3(図6)というSoC FPGAをリリースしているが、同社は2018年あたりからこのEOS S3を単に汎用の製品として売るのではなく、同社のQuickAIというAIoT向けプラットフォームとして売る方向に方針を変更している。
このQuickAIの目玉は、センサーデータのローカルでの解析である。QuickLogicは2019年1月にSensiML Corporationを買収し、SensiMLが提供していたセンサー向けのパターンマッチツールキットをQuickAIに組み込んだ。これを利用して、例えば加速度センサーとか騒音センサーなどをEOS S3上でSensiMLのToolkitを利用してその場で解析し、その結果として故障検知とか寿命予測といった事がエンドポイントで可能になる、というものだ。QuickAIそのものは他にもいろいろ応用例が挙げられているが、こちらもETAのECM3532同様、量産価格は5ドル未満の範囲に収まっている。
こうしたエンドポイント向けマーケットには、他にもCEVAとかVeriSilicon、KneronなどがNPU IPを提供している。おおむねどのIPもベースはDSPで、それゆえ構成を絞ればエンドポイント向けとして許容される価格内に収められるからというあたりで、あとは性能とコスト/消費電力をどのあたりで折り合いをつけるかというデザインポイントの話になる訳だが、今後もこうしたマーケットに向けた製品は増えてくるだろう。折しも2月12日から13日にかけ、サンノゼではtinyML Summitが開催され、多数の発表やデモが行われたというあたり、こうしたマーケットが本格的に立ち上がろうとしている様に見受けられる。ETA ComputeとXMOSの製品発表は、その最初の製品群になるのかもしれない。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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