組み込みエンジニアの現場力養成演習ドリル(18)
コンピュータゲーム最大のバグ 「弾が当たっても倒れない」より大きなバグは?(2/2 ページ)
解答と解説
「惑星Z」が球体だとすると、メルカトル図法的に2次元表示した場合、左右はつながりますが、上下はつながりません。上下左右が連続した2次元平面は、3次元で表現すると、球体ではなくトーラス体(ドーナツ型)となります(図8参照)。「球体」と「左右上下が連続」は同時に成立せず、「惑星Z」の形をトーラス体に変えるか、球体に固執するなら、モニター上での動きが仕様書とは大きく異なります。いずれにせよ、このゲームは「人気が出る、出ない」以前に、作成できません。これは、致命的なバグです。
地球のような球体を地図のメルカトル図法のような2次元の地図で表すと、図9のようになります。図9では、東西方向(緯線方向、左右方向)は連続し、例えば青い矢印のようにアフリカから西へ向かうと、大西洋を横断してアメリカの東海岸へ達しますが、南北方向(経度方向、上下方向)は、上下で連続しません。例えば、黄色い矢印のように、スカンジナビア半島を北上すると、北極を越えて、アラスカへ至ります。図6のように、上下が繋がっているとすると、北極へ向かうと、南極から出てくることになり、「惑星Zは球体である」に矛盾します。上下左右が連続する立体は、トーラス体であり、球体ではないのです。
以下に、このバグの4つの解決案を示します。「球体であること」と「モニター上で上下左右が連続すること」は同時に成立しないので、片方を放棄することになります。
【解決案1】
解決案1は、「惑星Z」を球体とし、ゲームのキャラクターは図9のメルカトル図法の上を移動させることです。モニター上では、左右の連続性はありますが、上下の連続性はないため、キャラクターは図10のように動き、通常のゲーム画面に親しんだプレイヤーには、大きな違和感があるでしょう。
【解決案2】
解決案2は、「惑星Z」を球体とし、モニターには「惑星Z」の一部を平面として表示することで、モニター上の上下左右の連続性を実現することです(図11参照)。Google Mapのような表現法ですね。この方式では、プレイヤーには、「惑星Z」が球体であると体感できません。
【解決案3】
解決案3は、「惑星Z」を球体ではなく、トーラス体とすることです。トーラス体をメルカトル図法でどのように表すか(例えば、ビニール製の浮き輪をどのように切って、平面にするか)という課題があるだけでなく、速度計算など、設計が非常に複雑となります(「複雑」はバグの素です)。ゲームのプレイヤーにも、「トーラス体」を平面として把握することは容易ではなく、大きな違和感があると思われます。
【解決案4】
解決案4は、「惑星Z」を球体でもトーラス体でもなく、上下左右が連続する2次元とすることです。この方式を採用すると、ゲームの世界は立体ではなく平面となります。時間単位の移動距離はモニター上のすべての場所で同じとなり、設計しやすく、ゲームのプレイヤーにも違和感はありません。これが最も現実的な対応策でしょう。ただし、ゲームの大きな「ウリ」であった「惑星Z」は使えません。従来のコンピュータゲームと同じ2次元の世界ですので、差別化は図れません。名称は、『惑星Zの大冒険』ではなく、『新世界Zの大冒険』のように変える必要があります。既存のゲームと同じ2次元ワールドの世界観で、新ゲームがヒットするか、最初から検討しなければなりません。
架空の世界は、現実より複雑ですね。
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組み込みエンジニアの現場力養成ドリル
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