組み込みエンジニアの現場力養成ドリル(6)
「順調すぎるデバッグ」は本当に順調?(1/2 ページ)
組み込みソフトウェアの開発プロジェクトは工程表に沿って進行します。そこにはデバッグフェーズもありますが、あまりに「順調」である場合、そこには落とし穴が潜んでいるかもしれません。プロマネの立場で「落とし穴」を見つけてください。
はじめに
今回も、問題を解きながら、組み込み系ソフトウェア開発の「現場力」と「開発力」を鍛えましょう。
これまで、仕様書のバグに関する問題が多かったので、今回の問題では、プロジェクトマネジャーの立場で、「デバッグ工程を続けるべきか、終了すべきか」の判断をしていただきます。今回のケースは「順調すぎるデバッグ」です。一見、理想的に進んでいるようですが、落とし穴が満載。厳しい目で分析し、表面上の問題点と、問題の本質を見つけてください。
問題編(制限時間30分)
デバッグ終了宣言をすべきか?
Aさんは、機器制御系の組み込みソフトウェアを新規開発しているプロジェクトのプロジェクトマネジャーです。開発期間は10カ月でC言語を使って開発しています。コーディングフェーズが終了した時点でのソースコードの総ステップ数は、コメント行を除き51KLOC(lines of code)。プロジェクト人員はAさんを含め6人です。
プロジェクトは2週間の机上デバッグを終了し、10週間前に予定通りマシンデバッグ工程に入りました。Aさんが描いたテスト項目消化の「予定」と「実際」、摘出バグ数の「予定」と「実際」は図1の通りです(青い点線は、「予定」で、黒い実線が「実際の数値」です。便宜上、5月の連休はなく、土日以外はデバッグしていると仮定します)。
テスト項目数は5397件。バグの摘出目標ですが、社内平均が3.8件/KLOCであるのに対し、このプロジェクトでは前回までの8回に渡る開発で平均5.9件/KLOCのバグが出ていたので、Aさんはプロジェクトのメンバーに310件以上のバグを見つけるよう指示しました。
デバッグは6月11日に予定通り終了し、バグは273件摘出しました。6月11日現在、図1を見てAさんは、「デバッグは極めて順調に進んだ。目標とした品質を確保できているので、デバッグを完了する」とテスト終了宣言をしてもいいでしょうか? 問題があるとすれば、どんな問題があり、どんな手段を取るべきでしょうか?
解答編
図1.を見ると、「順調なデバッグ」の中に、いろいろな問題点が見えます。
問題点1:バグ摘出数の急激な上昇
この図で最も気になるのが、5月7日前後にバグの摘出数が100件ほど急激に上昇し、その後、バグが1件も出ていないことです。バグの累積数をグラフにプロットすると、必ず図2のように緩やかな曲線になります。私の40年の経験でも、日本国内外のいろいろな品質保証エンジニアから聞いた話でも、ほぼ直角に立ち上がったバグ累積曲線が突然、水平になることはありません。プロジェクトマネジャーはまず、急上昇したバグの発生が突如、ゼロになった理由を解明する必要があります。
- 想定される原因(1):1つのバグを見つけ、他のモジュールもチェックしたところ、同じ原因のバグが見つかった。
例えば「表示するメッセージの先頭に表示すべきID番号が抜けていた」では、メッセージの数だけバグを検出したことになり、まとめて「バグを100件摘出」と報告するケースと考えられます。このような場合、バグは1件とカウントすべきです。
- 想定される原因(2):日付の誤り
現場で「バグレポートを書く時間がなく、5月7日にまとめて提出した」のような対応が成された場合にも図1のような累計曲線になることが考えられます。ただ、バグの検出日は正しく書くはずなので、これが原因とは考えにくいです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
組み込みエンジニアの現場力養成ドリル
このコラムでは、組み込みエンジニアが日々の開発で実際に遭遇する「小さなトラブルを」取り上げ、演習形式で解説します。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界の脱炭素はなぜ進まない? 実務で直面する“壁”の乗り越え方 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収するには? エネルギー&CO2削減の成果を出す秘訣 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
計測器アプリケーションにおいて7.5桁の精度を実現する方法
-
3
ものづくり白書2026を読み解く
-
4
ChatGPT Enterprise活用ガイド:業務時間を1万7600時間削減したMIXIの事例も
-
5
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
6
AI×DXで効率化する設備保全まとめ
-
7
「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは?
-
8
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
9
脱炭素投資をすぐ回収するには? エネルギー&CO2削減の成果を出す秘訣
-
10
動き出したファナックの「フィジカルAI」
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー