現代的なCPUの脆弱性
組み込みプロセッサにも影響大「Spectre」「Meltdown」の背景を探る(4/4 ページ)
SpectreとMeltdownの「本質的」な問題
話を戻すと、SpectreとMeltdownの本質的な問題はプロセッサのIPC(Instructions Per cycle、サイクル当たりの命令実行数)を引き上げるために、「さまざまな処理をアウトオブオーダー化」していることだ。
Intelの場合、Nehalem世代以降で全Load/Store Unitのアウトオブオーダー化が完了している。Core 2世代にMeltdownの影響がないのは、この世代はまだインオーダー処理(つまり行番号4の読み込みが完了して、初めて行番号7のLoadを行う事になるので、4で例外処理が入る結果7の読み込みが行われない)だからである。
あるいはIntelのプロセッサやCortex-A75でMeltdownが起こり得るのは、読み込みながら同時にアドレスチェックを行うという、いわば「投機的読み込み」を行っているためであるが、先にアドレスチェックを行うと当然その分、読み込み完了までのレイテンシが増え、その分性能が落ちることになる。
Cortex-A73で問題が出ないのは、この世代までは読み込み前にアドレスチェックを行っているためと思われるが、その意味ではCortex-A75はCortex-A73よりも一歩攻めた構成を採用したといえる。
言い方を変えれば、回路も大きくなるに関わらずこうした機能を入れてくるほど、最近のCPUは性能を追求している、という証ではないかと思う(変な話だが、同じメモリモジュールを使い、同じ条件で試しても、AMD製CPUのメモリアクセス性能がIntelに比べていまひとつ及ばないのは、このあたりでAMDがまだ攻め足りてない、という証拠なのかもしれない)。
組み込み向けで言えば、ここまで高度に攻めているプロセッサはIntel、AMD、Armを除くとそう多くない。RISC-Vは2018年1月4日に声明を出しているが、こちらは「Spectre/Meltdownは実装に依存する問題で、ISAの問題ではない」としており、RISC-Vプロセッサを実装するSiFiveも「SiFiveのプロセッサにはSpectre/Meltdownの脆弱性は存在しない」と説明している。
MIPS Technologiesも2018年1月19日にSpectre/Meltdownに関しての情報を公開した(MIPS: response on speculative execution and side channel vulnerabilities)。これによれば、MIPS P5600及びMIPS P6600の2製品については、Variant 1/Variant 2(Spectre)の脆弱性が存在するが、Variant 3(Meltdown)についてはこの影響を受けない、としている。
ただこうしたアーキテクチャ上の脆弱性は、これで終わりということはまずありえないし、脆弱性を徹底的につぶすという対策はしばしば性能とのトレードオフになることを考えると、今後似たような話が出てくる可能性はまだあるだろう。
Warrior P-Classなどの攻めている製品を持つMIPSは前述のようにMIPS P5600/P6600についての情報こそ出してきたが、アーキテクチャライセンスの形で実装されている製品に関しての情報は(当然ながら)無い。同様にARM v8Aのアーキテクチャライセンスを取得したCaviumやQualcommなどについても今のところ情報が無い。このあたりの情報と(必要ならば)対策パッチ類が出回るまで、もう少し時間がかかりそうだ。
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