組み込み開発視点で見る「IoTの影」(7)
組み込み開発者のための「脅威一覧表」解説(1/3 ページ)
日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)では、コンシューマー向けIoT製品を開発する際、どのようなセキュリティを実装すべきか指針となるガイドを提供している。ガイドを参照に「脅威一覧表」の読み方を解説する。
前回は日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)のIoT セキュリティワーキンググループで作成した、コンシューマーIoTのセキュリティガイドの肝となる3章の前段を解説した(関連記事:組み込み開発者のための「IoT製品 セキュリティ実装ガイド」)。今回は最もボリュームのある「脅威一覧表」の読み方を解説しようと思う。
そもそも一覧表にしようと思ったのは、日本の開発者が欲しがる体裁にしようということが念頭にあったからだ。加えて「○×表ではないもの」「既に関連する組織で発表されているもの」「開発者に参照されているもの」に近くすれば理解してもらいやすいだろうと考え、まずはIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が提供しているものを探し出した。
IPAが提供しているものは自動車を対象としているので、それを「コンシューマー向けIoT製品」と差し替えて脅威分析を行うことにしたのである。なお「状態」としては、製品を購入してから廃棄に至るまで5つの状態を定義している。
これはユーザーが製品を導入してから、廃棄するまでをライフサイクルと見立てたものだ。特に注意してほしいのは以下の点になる(ガイドにも注記している)。
| ステージ | 留意点 |
|---|---|
| 利用開始 | デバイスの導入設定がユーザーにとって複雑でなく、初期設定に必要な情報などを第三者が再利用することのできない仕組みを提供することが望ましい |
| 異常発生時 | 利用を開始した後、デバイスに異常が発生した場合、異常を解消して復旧する必要がある |
| 放置・野良状態 | 利用開始後、長期間にわたって使用せずに稼働させたまま放置することで第三者がデバイスにアクセスすることが可能な状態を「野良」と呼ぶが、この状態はセキュリティ上は好ましくない |
| 買い替え・廃棄 | 所期の目的を達成し、デバイスが不要となる場合には買い替えなどに伴いいままで使用してきたデバイスに記録、保存されたデータの消去や初期化についての手順が準備され、ユーザーが対処するか、ユーザーが対処せずともよいような仕組みがあることが望ましい |
そして、脅威は12種類設定している。本ガイドではIoTデバイスへの脅威についてIPAが発行した「自動車の情報セキュリティへの 取組みガイド」を元に以下のように定義した(1~2は利用者による操作に起因する脅威、3~12は攻撃者による干渉に起因する脅威)。これを対象となるデバイスに当てはめて脅威分析を行うこととする。
- 操作ミス デバイスやシステムを誤動作させられてしまう
- ウイルス感染 デバイスやシステムが有する情報やデータが漏れるか誤動作させらてしまう
- 盗難 デバイスが盗まれてしまう
- 破壊 デバイスが破壊されてしまう
- 盗聴 通信内容を他人に知られてしまう
- 情報漏えい 知られたくない情報を盗まれてしまう
- 不正利用 他人にシステム、デバイス、ネットワークを使用されてしまう
- 不正設定 他人にシステム、デバイス、ネットワークを設定変更されてしまう
- 不正中継 無線や近接による通信内容を傍受されるか、書き換えられてしまう
- DoS攻撃 システム、デバイスの機能やサービスが利用できなくなる
- 偽メッセージ 偽メッセージによるシステム、デバイスが誤動作してしまう
- ログ喪失 動作履歴が無いため、問題発生時に対処方法が分からなくなる
実はIPAの区分は少し異なっているが、12の区分に展開したのは、IPAの区分そのままでは使いにくかったらからであり、もちろんこの区分も完璧ではない。例えばISO27001では脅威だけではなく脆弱性も扱っているが、私たちは扱っていない。
脅威あるいはリスクをどのように分類・定義するかは対象のシステムによって違いがあるはずであるので留意してほしい。例えば、デバイスの持つインタフェースは有線の非公開独自プロトコルのみだとする。プロトコルが中間者攻撃などを排除できるように作られているのであれば、不正中継は考慮しなくていいだろうし、強度の高い暗号化通信が利用できれば盗聴も考慮しなくて済むかもしれない。あるいは、ここに挙げていない新たな脅威を定義できるかもしれない。
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