TechFactory通信 編集後記
本格化するLPWAの競争、引き金を引くNB-IoT
無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」が注目を集めています。日本国内においては「Sigfox」「LoRaWAN」「NB-IoT」が有望視されており、その競争は今夏に本格化しそうです。
IoTの“ラストワンマイル”をつなぐと存在して「低消費電力」と「広範囲」を特徴とする無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」が注目を集めています。LPWAは特定の技術や規格を指すものではありませんが、IoT/M2Mに欠かせないさまざまな「モノのネットワーク化」を進める上で大きな役割を果たすと期待されています。
◎「LPWA」関連記事 ~活用、導入、事例、課題、規格、モジュール~ など
» LPWAの急伸、MIPSの落日。IoTの歩みは緩やかに
» LPWA対応のIoTユニットを開発、SIGFOXとAIでLPガス検針と配送を効率化
» 群雄割拠のLPWA、2016年度は「種まき」のタイムリミット
» 5GとLPWAに挟撃されるWi-Fiはどこに活路を見いだすのか
» IoTやM2Mで注目される通信技術「LPWA」とは何か
具体的にどのような技術や規格がLPWAに相当するかは各論あるかと思われますが、日本国内においては既に商用サービスが開始されている「Sigfox」と「LoRaWAN」、これに加えて、ソフトバンクから2017年夏の商用サービス開始が予告されている「NB-IoT」の3つが有望視されています。
生き残るLPWAはどれだ?
この3つの伝送速度は100~300kbps程度ですが、到達範囲については利用環境に左右されるものの基本的に10キロ以上の距離を持ち、LTEやWi-Fi、Bluetoothといったこれまでの無線技術がカバーしていなかった「低速ながら広範囲で使える通信技術」に位置付けられています。
SigfoxとLoRaWANはいずれも基本的に免許がいらないISMバンド(Industry Science Medical:産業や学術、医療用に開放されている帯域、日本では主に920MHz帯)を利用し、NB-IoTは4G通信で利用されているLTEをベースとすることから900MHz帯などを利用する認可制となります。NB-IoTは認可制であるために「通信料年間100円」をうたうSigfoxのような超低価格路線はとりにくいと思われますが、認可制であるが故に安定したネットワークとして提供されることが期待されています。
通信速度と到達範囲に類似性を見てとれるSigfoxとLoRaWANですが、Sigfoxはデータ送信が「上りのみ」であり、基本的にはセンサーノードからの情報収集用であるという大きな特長を持ちます。また、SigfoxはフランスのSIGFOX S.Aが提供するネットワーク網(日本においては京セラコミュニケーションシステムがオペレーターを務める)を利用する集中管理型、LoRaWANは対応ゲートウェイとネットワークサーバを立てれば誰でもネットワークを構築できるオープン型という違いもあります。
提供されるサービスに類似点が多いと「どれが生き残るか」と考えてしまいますが、2017年7月上旬の状況を見る限り、その質問に答えることは難しいと言わざるを得ません。東京ガスや中部電力といった事業者がLPWAを取り入れたサービスの実証実験を開始していますがまだ本サービスには移行しておらず、各社ともに実サービスとしての収益性や安定性などの評価を行っている段階と言えます。
LPWAサービスを提供する事業者の側でも、評価中というスタンスは変わりません。NB-IoTの提供を予告しているソフトバンクは静岡県藤枝市と提携して市内全域にIoTプラットフォームを構築するとしていますが、具体的な通信手段については「NB-IoTCat-M1、LoRaWANなどの通信規格を収容可能なプラットフォーム」と選択の余地があることを認めています。
選択肢を持っておきたいという意向は、IoT/M2M向けにMVNOサービスを提供するソラコムも同様です。ソラコムはこれまで提供するクラウドへの通信手段としてセルラー網とLoRaWANを推進してきましたが、2017年7月にSigfoxへの対応を開始、さらにスカパーJSATと共同で衛星通信も選択肢として用意する意向を明らかにしています。
2017年3月は各社が「LPWAを使った実証事件の開始」や「LPWAを中心としたアライアンスの形成」をアナウンスしました。そのなかでのLPWAは先行したSigfoxやLoRaWANが主でしたが、2017年夏には免許制の周波数帯を用いるために提供が他に比べて遅れていたNB-IoTが選択肢として浮上することになります。
どの技術、どの規格、どのサービスが生き残るか、あるいは共存することになるか。LPWAを巡る競争は今夏に本格化します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechFactory通信 編集後記
「モノづくり総合版 TechFactory通信」に掲載された、TechFactory担当者による編集後記の転載記事一覧です。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー