TechFactory通信 編集後記
破壊的イノベーションのアプローチが家庭円満をもたらす?
関西学院大学 経営戦略研究科 教授の玉田俊平太氏の講演「製造業のためのイノベーションの兵法! ~破壊的イノベーションの理論~」を聞いてきました。
ビジネスの世界を中心に、「Innovation(イノベーション)」という言葉をよく見聞きします。企業スローガンなどで多く採用されている言葉の1つでもありますが、皆さんは、イノベーションの意味、定義を正しく理解していますでしょうか?
先日開催されたダッソー・システムズ主催の「3DEXPERIENCE FORUM Japan 2017」(会期:2017年6月6~7日)では、『日本のイノベーションのジレンマ:破壊的イノベーターになるための7つのステップ』の著者で、関西学院大学 経営戦略研究科 教授の玉田俊平太氏が講演を行いました。テーマは「製造業のためのイノベーションの兵法! ~破壊的イノベーションの理論~」です。
この手の講演はあまり取材してこなかったのですが、玉田氏の気さくなキャラクターと分かりやすく丁寧な説明のおかげで、イノベーションの定義と「破壊的イノベーション」とは何か? についての理解が深まりました。講演内容については、レポート記事「やさしく教える『破壊的イノベーション』の基礎」をご覧いただくとして、ここでは玉田氏の講演内容を抜粋してご紹介したいと思います。
関西学院大学 玉田俊平太氏 講演レポート:
破壊的イノベーションのアプローチが家庭円満をもたらす?
まず、イノベーションとは何か? ですが、玉田氏は「よく日本語で『技術革新』と表現されることがあるが、それではイノベーションの定義にそぐわない。新規性のあるアイデアを技術で実現し、製品やサービス、プロセスが新しくなって、それが全体に普及することがイノベーションである」といいます。アイデアを技術的に実現することは“Invention(インベンション)=発明”であり、そこからさらに市場/顧客という第2のハードルを越えて、初めてイノベーションと呼べると説明します。これを踏まえ、玉田氏はイノベーションの日本語表現を「『創新普及』と呼んでもらいたい」と来場者に呼び掛けていました。普及が大切だということがよく分かります。
そして、破壊的イノベーションですが、既存顧客には性能が低過ぎて魅力的に感じられないが、(1)新しい顧客や(2)それほど要求が厳しくない顧客(別顧客)にアピールできるようなシンプルで使い勝手が良く、安上がりな製品がもたらすといいます。「最初は既存顧客に『こんなものは単なるオモチャだ!』といわれてしまうようなものでも、時間とともに少しずつ性能が上がっていく、それがいつしか顧客の要求する水準を超えるときがくる。それが“破壊”の瞬間だ」と玉田氏は説明します。かつて圧倒的なシェアを誇ったIBMのメインフレームが、後に登場した性能も価格も10分の1程度のミニコンピュータを手掛けるDEC(Digital Equipment Corporation)やData Generalといった新規参入企業の勢いに押され、徐々に既存顧客が奪われていった過去の歴史がまさにそれです。
また、講演の後半では破壊的イノベーションを起こすためのヒントとして、玉田氏は「異なる性能尺度の下、何らかの制約によって製品やサービスの消費が妨げられている層に対して、アイデアを打ち出す方法がある」といいます。ここでの制約とは、スキル、お金、アクセス(場所)、時間といったものです。例えば、電話はかつて家の中でしか使えませんでしたが、携帯電話機が場所という制約からユーザーを解放してくれました。
もう1つが満足過剰になっている層に対して、低コストのビジネスモデルを展開するやり方です。「自動車の最高時速やPCの性能、床屋のサービスなど、それ以上性能(サービスレベル)が上がっても、少しも満足度が向上しない状況の顧客を見つけ、そこに向けて必要十分な性能で、シンプルかつ安価な製品/サービスを提供し、“ローエンド型の破壊的イノベーションを起こす”ことだ」と玉田氏は述べます。前述のミニコンピュータの事例がこちらに当てはまります。
講演として聞いていると理解も深まり、自分でも何だか破壊的イノベーションが実現できそうな気がしてきますが、もちろん現実はそう簡単ではありません。しかしそんな中、今回の講演で1つだけ日々の仕事や日常生活にも応用できそうなものがありました。それは最後に紹介した“満足過剰”に対するアプローチです。自己満足で余計なおせっかいをしたり、喜ばれもしない過剰な対応やサービスをしたりしないよう、相手の要求水準を捉え、適切な(必要十分な)アウトプットを提示することは、仕事はもちろん、人間関係の構築や家庭円満にも役立つのではないでしょうか?
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