IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト(2)
ソフトウェアテストのコストと品質(後編)―現場と「上」で一緒に考える(6/6 ページ)
品質の定量的計測
品質の計測は、コストの計測よりもさらに困難な問題になる。一番、簡単な計測は規模当たりのバグ数(バグ密度)である。しかし観測結果としての障害件数であれば比較的簡単に計測できるが、その障害の原因数を計測するのは困難である。障害の原因を分析するまでに多くの時間が必要な場合があり、すぐに計測できないことが原因の1つである。
また障害分析では、分析結果が個人によって異なることもある。例えば、範囲外のデータを渡した側に原因があるとするのか、それを受け手が適切に処理しなかったのを原因にするのかによって、結果は異なるだろう。もちろん、これは仕様で決めるべきであり、仕様を守らなかった方が犯人であるが、仕様が決まっていない場合も多い。
バグ密度による計測は、当たり前品質の計測であって、魅力的品質の計測になっていない。魅力的品質の計測に際しては主観評価を行うことが多い。ユーザビリティなどを客観的評価する試みはなされているが、確立された方法はない。客観的評価を主観評価によって評価している段階で、将棋プログラムの評価関数のように人間以上の評価をするまでに至っていないといえる。これから出てくる魅力的品質の客観的計測方法に期待したい。
上から目線では計測の必要性は十分に理解できる。しかし計測には開発現場のコストが発生し、計測結果次第では、開発現場の負担が増すことに留意すべきである。計測を開発現場にさせたら、その見返りは必ずするべきで、何のために計測し、その計測をどのように利用し、その結果はどうだったのかを知らせ、さらに開発現場からもいつでも利用できるようにする。これで開発現場と“上から目線”のお互いが、Win-Winの関係になれる。
とあるテスト現場より(9)
A:「先輩、品質って結局なんでしょうね」
B:「かけたお金だよ」
全社思索的解決―Win-Winになる解決法
いかにテストコストと品質のバランスを取るのは難しく、どうしても過剰品質になりがちになることが分かったかと思う。そしてこの問題に対する技術的解決策もない。しかしソフトウェアテストは日々実施され、解決策が出るまで待つことはできない。今すぐにも何らかの解決が必要である。
少なくともコストと品質を計測し、それを制御する全社施策的な戦略が必要となる。そのときには「品質を毎年5%向上」という無理難題でなく、例えば、バグ密度が目標値に漸近的に近づくように、具体的に実現可能性も考慮し、関わる全ての人物がWin-Winの関係を築けるようにすべきである。
今回は具体的な解決策までには至らなかったが、同じ話がIoTやAI、ビッグデータが関与するシステムでさらに難しい問題として登場することを読者に予告し、覚悟を促すことにする。
著者紹介
五味 弘(ごみ ひろし):OKI(沖電気工業) シニアスペシャリスト、エバンジェリスト。博士(工学)。
ソフトウェアの開発支援・教育に従事。電子情報技術産業協会(JEITA)専門委員会の委員長や情報処理振興機構(IPA)などの委員など。情報処理学会(シニア会員)。三重大学などの非常勤講師やリサーチフェローも務める。IoTやAI時代のソフトウェア開発の知見融合が関心事。
著書に『はじめてのLisp関数型プログラミング』(技術評論社、2016年)、共著書に『IoTセキュリティ』(日経BP社、2016年)、『定量的品質予測のススメ』(オーム社、2008年)、『プログラミング言語論』(コロナ社、2008年)などがある。雑誌執筆や講演なども多数。著者の個人サイトはhttp://gomi.info/。
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IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト
言うまでもなくソフトウェアテストは重要だが、IoTやAIなどの新しい概念によってソフトウェア自体の在り方が変わりつつある中、旧来からのテストを踏襲するだけでは成果は得られない。新時代のソフトウェアテストについて、考察する。
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