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「AMDの組み込み」は今度こそ変わるか:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(2/2 ページ)
組み込みシステムに古くから携わっていると、「AMDの組み込み」に微妙な感情を持ってしまう。しかし、今のAMDは組み込みに本気であるように見える。歴史を振り返りつつ、AMDの「本気度」を探ってみたい。
現CEOが刷新した、AMDの体質
「ある程度顧客がついたあたりで製品ディスコン、顧客が霧散」というパターンはこの後も繰り返されることになる。
理由はやはり、製品を発売してその四半期中に売り上げが立つPCのマーケットに慣れてしまうと、デザインウィンから売り上げが立つまで3〜5年の時間がかかり、しかも、その売り上げがまず急伸しない組み込み向けのマーケットは、コストに見合わないという判断だったのだろうと思う(Intelも同じようなことを繰り返しているが)。
その後、AMDはK6/K7/K8とアーキテクチャを更新してゆき、組み込み向け製品も更新に応じて用意されるものの、目立ったシェアを取るには至らなかった。こうなると顧客の側としても、「AMDはPCと同じ扱いでしか組み込みを扱ってくれない」という見方となり、そうした扱いでも構わない製品でしか使わなくなる。これはこれで仕方ないところだ。
こうした流れが一変するのは、現在の最高経営責任者(CEO)であるLisa Su氏がAMDにやってきてからだ。IBM出身、という話は良く知られているが、実はIBMとAMDの間にFreescaleを挟んでいる。2007年にFreescaleへ入社した際は最高技術責任者(CTO)だったが、途中からNetworing and Multimedia Groupを率いることになり、AMDの入社までは組み込み市場を相手にビジネスをしていた。
Lisa Su氏の起こした変革
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