将棋「名人位」挑戦規定のバグ:組み込みエンジニアの現場力養成ドリル(3)(2/2 ページ)
組み込みエンジニアの現場力を上げるドリル、今回は「仕様書のバグ」に挑戦します。将棋界の最高タイトルの1つである、名人位の挑戦規定という仕様書に潜むバグを発見してください。
補足説明として、各級に在籍する棋士には「級の中の順位」があり、前年度の成績のよい順になります。この順位が意外に重要で、例えば、B級2組で全勝者が5人いる場合、上位の2人しかB級1組へ昇級できません。降級も同様で、同じ成績でも下位者から降級します(これを「順位に泣く」とか「順位に救われる」と言います)。
また、昇級と降級は物理的に確定した瞬間、制度的にも確定します(今回のC級2組では、9戦が終わった時点で藤井聡太六段が9勝0敗、2位の7勝2敗が4人だったため、あと1局を残しながらも、この時点で昇級が確定しました)。なお、プロの将棋では「持将棋」という引き分けがありますが、日をあらためて指し直すので、必ず勝ち負けがつくと考えてください。
以上が「通常の規定」で、ご存じの方々も多いでしょう。ここで、「通常」と書いたのは、2017年6月から2018年3月までの第76期の対局では、三浦弘行九段の冤罪(えんざい)事件の救済措置として、三浦九段がA級の11位となりました。A級に通常より1人多い11人が在籍することになったため、以下の影響が出ました。
- A級からB級1組への降級者は3人になった。
- B級1組の在籍者が11人になった。
- B級1組からA級への昇級は通常通り2人だが、B級2組への降級者は1人に減った。
いずれも、来期には定員をA級は10人、B級1組は13人に戻すための措置と思われます。以上が補足を含めた「名人位タイトル戦」の概要ですが、この「仕様書」の中にバグがあります。それを見つけてください。ヒントとして、第76期のA級の全成績を以下に挙げます。今期は6人が6勝4敗となり、史上最多人数による挑戦者決定プレーオフが行われました。B級1組への降級は、渡辺明棋王、行方尚史八段、屋敷伸之九段の3人です。
名人戦の「仕様書」に潜むバグ
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