あえてのサーバ水没でAIを加速、データ機密が重要な製造拠点にも:FUJITSU AI ソリューション Zinraiディープラーニング システム
製造業においてもディープラーニングは注目されているが、機密性の高い製造データを扱う際にはオンプレミスでの実装が要求される。富士通のZinraiディープラーニング システムはこうした要望に応えるもので、オプションで「液浸」も用意されている。
AI(Artificial Intelligence)技術の1つであるディープラーニングが近年、さまざまな分野で活用されてるようになっている。製造業においてもそれは例外ではなく、化学プラントにおえる品質予測や画像認識を利用したピッキング工程における精度向上、PLCと連動した生産ライン制御などの目的が提案、あるいは用いられている。
このように実用性の高まっているディープラーニングだが、構造的な問題を1つ抱えている。それは高い認識精度を実現するために大量のデータと、学習側にその大量のデータを処理する高い演算能力が必要とされることだ。現在は学習側にクラウドを用いて演算能力の源とすることが多いが、データを物理的に社内運用したいといった運用ポリシーなどによってはオンプレミスに学習側機能の実装が求められることもある。
富士通が2017年5月より販売開始する「FUJITSU AI ソリューション Zinraiディープラーニング システム」(以下、Zinraiディープラーニング システム)はこうしたオンプレ実装の要望に応えるもので、NVIDIAのGPU「Tesla P100」を搭載したラックサーバに検証済ストレージとソフトウェアを組み合わせ、オンプレミスのディープラーニング基盤システムとして提供される。
富士通のAI基盤「Zinrai」は目的に応じたAPIとディープラーニング基盤をクラウドもしくはオンプレミスにて提供するもので、APIには画像や手書き文字の認識、状態認識といった「基本API」と、交通画像認識、会話翻訳、対話型Botなど目的に応じた「目的別API」が用意される。このAPIや運用については富士通での社内実践や顧客との関係で培われた業務ノウハウが反映されており、「教師データ作成が難しい」「AI適用方法が分からない」といった導入に関しての課題も解決する。
道路の地下をレーダー探知して空洞を調査する川崎地質の例では、レーダー画像をもとにした特徴量検出で解析に要する時間を10分の1に短縮することに成功している。そもそも「道路地下のレーダー画像」などというデータは少ないので、大量のデータを必要とするディープラーニングでは対応しにくい事例だが、教師データの独自拡張を行うことで認識率を向上させ、大幅な工数短縮を果たしている。
ノウハウだけでは解決しにくい課題である「より高速な学習データ作成」を可能にするのが、新たに提供開始されるオンプレミスのZinraiディープラーニング システムだ。1台あたりGPUを8個まで搭載することで「世界最速クラスのディープラーニング基盤を実現」(同社)する。
高い計算能力を低コストで発揮させるため、液浸オプションも用意する。フッ素系の絶縁性水溶液を循環させた容器の中に浸して冷却し、高い冷却効率を実現しながらも温度管理に必要な電気代を削減する。電気代については液浸化することで最大40%の電力効率増を可能にするというが、液浸システムそのものにも導入と運用のコストが発生するため、あくまでもオプションでの提供となっている。
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