自動運転車が起こした事故にメーカーは責任を持つか:明治大学 中山教授 JEITA講演(1/3 ページ)
完全自動運転の実現に向けた努力は続けられており、その実現は夢物語ではない。しかし、これまで人が全責任を負ってきた運転を機械が担うことで、「有事の際の責任がどこに帰するか」という問題が浮上する。法学的な観点から現状を解説する。
乗り込んで行き先を告げれば、後はクルマが全ての運転を肩代わりしてくれる――。そんな完全自動運転の実現に向けた努力が各所で続けられている。自動運転に程度(レベル0〜4)は存在するものの、あるレベル以上ではこれまで人間のドライバーが責任を負っていた運転という動作を一部でも機械が肩代わりする。その際に浮上する問題が「責任の所在」だ。
この問題を取り上げたセミナー「自動運転社会における責任問題はどう解決すべきか」が、2017年2月23日にJEITA(電子情報技術産業協会)の主催で開催された。現時点では完全な自動運転車の実用化はなされていないために、「完全自動運転車が事故を起こした場合の責任所在」については将来に向けた話題となるが、自動運転技術そのものは既に市販車へ搭載されており、その進化は止まることなく続くだけに重要な問題といえる。
製造物責任法(PL法)が製造業にとって重要なものであるように、「自動運転車における責任」が、自動車開発に携わるものにとって重要である。ここでは本セミナーにて行われた明治大学法科大学院教授 中山幸二氏の講演「自動運転車実現に向けた 法的課題と法整備の最前線」を紹介する。
「技術に法整備は追い付いてない」?
中山氏がまず取り上げたのは「自動運転の技術開発が急速に進んでいて、法的整備は遅れている」という世間的な認識についてだ。確かに歴史的に見ても技術開発が先行し、普及と安定が生じた後に関連法規の整備が進むというのが一般的ではあるが、自動運転技術に関連する法的整備については国際的な開発加速化を背景に2014年ごろ(2014年3月にはウィーン条約改正案が採択され、みなし規定ながら車両制御の自動化を容認した)から急ピッチに進んでいると解説した。
日本国内においても、安倍首相が政府の未来投資会議で、2020年の自動運転実現を目標として制度やインフラの整備を進める考えを示すなど、自動運転技術の推進は国家戦略の1つとされていることから、具体的に自動運転を前提とした法令整備までは至っていないものの、2015年10月には道路交通法や公道実験についての有識者検討会も開始されており、急速に整備が進められている状態だ。
自動運転車が起こした事故にメーカーは責任を持つのか
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