IoT時代のセキュリティ実装、製造側は何を指針とすべきか:ET2016(1/2 ページ)
ET2016の特別講演に慶應義塾大学の徳田教授が登壇、「IoTの現状」と「IoTのセキュリティ課題」について語った。盛んに語られるIoTのセキュリティだが、IoTデバイスを製造する立場としては、何に留意すべきなのだろうか?
組込みシステム技術協会(JASA)主催の組み込み技術とIoT技術の総合展「Embedded Technology 2016/IoT Technology 2016」(11月16〜18日、パシフィコ横浜)の特別講演として慶應義塾大学 環境情報学部 教授の徳田英幸氏が登壇。「IoTの進化とセキュリティの課題」と題して、「IoTの現状」と「IoTのセキュリティ課題」について語った。
「創発」(IoT×my business)現象
「モノ(物)のインターネット」と訳される事の多い「IoT」(Internet of Things)だが、具体的には「あらゆるモノがインターネットに接続され、情報を交換し、相互に利活用される環境であり、これまでにないサービスや体験などを創出できる技術」として社会実装されつつあり、その具体例も見られるようになってきている。
天気予報を取得して天候にあわせた散水を行うスプリンクラー、コネクティッドカーによる渋滞回避と省エネ運転、ジェットエンジンの状態管理による燃費改善など徳田氏はさまざまな事例を挙げながら、現状を「IoTというキーワードで付加価値が付けられるか、(さまざまな企業や団体が)試行錯誤している“創発”(IoT×my business)現象が起きている」と評する。
各社の取り組みが進む中で、IoTの範囲は「モノ」だけにとどまらなくなると徳田氏は述べ、モノ(人工物)だけではなく人や生物、データ、プロセス、空間情報や位置情報などもつながるようになり、「物理空間からセンシングしてサイバー空間に取り込み、サイバー空間内で処理が行われ、アクチュエーションを物理世界に返す」その仕組みこそがIoTの本質であるとする。
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このように現実世界へオーバーレイする形でIoTが一般化することで、どのような影響が生じるのか。1つは経済効果であり、徳田氏はIoTAnalytics.comの調査結果として、産業、スマートシティー、エネルギー、コネクティッドカーの順で多くのIoTプロジェクトが進んでおり、2023年ごろにはドイツのGDPを超える経済規模をIoTが生み出すのではないかという予測を紹介した。
ただ、IoTが及ぼす影響はプラス面だけではない。徳田氏は「新産業創出」「イノベーション創出」「CPS(Cyber Physical System)によるサイバーフィジカル空間のエンパワーメント」といったプラス要素と並んで、「セキュリティ攻撃の多様化」「新たな参入障壁の誕生(認証基準、セキュリティプロトコル、ソフトウェア検証など)」などといったリスクやマイナス面が増大する可能性を指摘し、「つながるメリットとリスクのバランス」が求められ時代になると述べる。
IoTの本格で攻撃も多様化する
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