IoT機器を狙う「スマホの巨人」クアルコム、その勝算は:クアルコム Snapdragon410E/600E
スマートフォン向けSoC(System on Chip)では「Snapdragon」にて高い知名度を持つクアルコムが、産業機器やIoTデバイスの分野に進出する。個人開発者にもリーチすべく1個販売する体制を構築するが、その勝算は。
IoT(Internet of Things)やインダストリー4.0の本格化に伴い、産業機器ですら「つながる」機能はもはや欠かせないものとなりつつあるが、そのネットワーク機能をどのように実装するかは悩みの種といえる。耐久性や消費電力性、セキュリティ対策などさまざまな観点からみても民生機器とは異なる要件を満たす必要のある産業機器の場合、単にネットワークチップ(カード)を用意すればよいというものではない。
産業機器のネットワーク機能搭載に際して、有力な選択肢となるのがチップレベルでの実装だ。あるチップにネットワーク機能を統合してしまえば、実装面積や消費電力などで優れた結果を得ることが可能となるため、既に複数ベンダーがSoC(System on Chip)あるいはLSIとして産業機器向けのネットワーク機能搭載チップを投入している。ここにスマートフォン向けSoCの巨人であるクアルコムも本格参入する。
同社SoC「Snapdragon」シリーズに、産業機器やIoTデバイスを対象とした「Snapdragon 410E」「Snapdragon 600E」を追加。さらには、個人開発者を含めたさまざまな需要に答えられるよう、1個から販売とサポートが行える体制を、販売代理店であるArrow Electronicsを通じて構築した。
これまでSnapdragonシリーズはスマートフォンなどを製造する大規模メーカーへ同社が直接販売しており、「販売代理店を通じて1個からの販売」という販路の提供は同社として初となる。クアルコムCDMAテクノロジーズ副社長の須永順子氏は「Snapdragonはスマートフォン向けに企画開発された製品だが、培われた技術はIoTの市場にも求められている。きちんと工夫すればリーチできる」と新市場への期待を述べる。
販売される「Snapdragon 410E」「Snapdragon 600E」はいずれも組み込み用SoCとして10年間の供給を約束しており、少なくとも2025年まで販売される(サンプル出荷が2015年のため)。前者はクアッドコアのARM Cortex A53(最大1.2GHz駆動)、後者はクアッドコアのKrait 300(最大1.5GHz駆動)を搭載しており、それぞれGPUも備える。
販売代理店を通じて幅広く提供することから、開発者コミュニティーも立ち上げた。開設されている「Qualcomm Developer Network」では各種ドキュメントやツール、コンパイラなどをクアルコムとの契約なしに入手可能だ。
国内における販売はArrow Electronics傘下のチップワンストップとアロー・ユーイーシー・ジャパンが行う。アロー・ユーイーシー・ジャパンが量産向け販売、チップワンストップが試作などに向けた小口販売を担当する。チップワンストップでは既にプロトタイピングなどに適したSnapdragon 410Eを搭載したボードコンピュータ「Dragonboard 410c」を販売しており、SoCだけではなく、各ボードベンダーらと協力してSOM(System on Module)も提供する。
まだ見えないクアルコムらしさ
スマートフォン向けSoCの巨人であるクアルコムが、「Snapdragon」をもって産業機器分野に本格参入する格好だが、第1弾となる投入製品の仕様を見る限り、すぐさま爆発的な支持を得ることは難しいだろう。
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