大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
AuroraがFrontierを超えられない理由/SynopsysもRISC-V陣営へ(3/3 ページ)
SynopsysもRISC-V陣営へ
2023年11月7日、SynopsysはARCプロセッサIPに新しくARC-VプロセッサIPを追加した事を発表した。この発表に合わせて、組み込み向けコントローラのRMX、リアルタイム処理向けのRHX、それとアプリケーションプロセッサのRPXという3種類のファミリーが公開され(図4)、22種類ものプロセッサIPが提供開始となっている。もちろん22種類と言っても実際にはそこまで製品はなく、例えばRMXシリーズならパイプライン3段のRMX-100と5段のRMX-500が基本として提供され、そこにDSPおよび32×32のMUL/MACユニットを追加したRMX-100DとRMX-500D、さらに機能安全のサポートを追加したRMX-110-FSとRMX-510-FSが加わるといった具合なので、コアそのものとしては4種類(RMX-100とRMX-500以外にリアルタイムコントローラ向けのRHX-100、アプリケーションプロセッサのRPX-100)があるだけである。ちなみにRHX-100とRPX-100はどちらも10段パイプライン構成ではあるが、RPX-100はDual Issue構成なので、ある程度共通部分もあるかもしれないが基本は別IPと考えるべきだろう。
これだけのラインアップをいきなり公開するあたりは、準備に数年は要していた(1年やそこらでこれだけのものをScratchから起こすのは難しい)ものと思われる。もちろん、例えばRMX-100/500はひょっとするとARC EMシリーズをベースに命令セットだけRISC-V対応とした、なんて可能性もなくはないのだが、それにしても開発環境まで含めていきなり用意して見せたのはさすがにSynopsysである(とはいえMQX RTOSのサポートまでは考えていないようだが)。そしてこの動きは、独自のProcessor IPを提供していたベンダーには結構大きなインパクトがあるだろう。従来この分野、Armを除くとSynopsys(に買収されたARC International)とCadence(に買収されたTensilica)が2大勢力であり、これにAndes TechnologiesとかCortusとかCodasipなどの小さなメーカーが続いており、ただ小さいメーカーは2017年以降雪崩を打つようにRISC-Vへのシフトを見せていた。一番極端なのがMIPS Technologiesで、もうMIPSアーキテクチャそのものを捨ててRISC-Vにシフトしている。Synopsysはここまで極端ではなく、引き続き従来のARCアーキテクチャも提供していく意向のようだが、新規デザインには恐らくRISC-Vを勧める方向だろう。
さて、残るCadenceはどう動くだろうか? 2022年10月はこんなBlogエントリを公開しているが、これはあくまでもCadenceのEDAツールはRISC-Vプロセッサの設計に使えますという以上の話ではないが、論理的に考えたらCadenceがRISC-V IPを出さない/出せない理由はない。もしこれが実現すると、本当に業界はx86 vs Arm vs RISC-Vという三つ巴状態になるだろう。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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