大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
AuroraがFrontierを超えられない理由/SynopsysもRISC-V陣営へ(1/3 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、スパコンTOP500にIntelのAuroraがランクインするもFrontierの王者は揺るがなかった理由と、エコスシステムが広がるRISC-V陣営へSynopsysが加わった件について考察する。
2023年11月の最大の話題は、恐らくOpenAIを巡る騒動だろう。一連の経緯は鈴木淳也氏のこちらの記事を読んでいただくのが早いかと思う。この記事の後もさらに事態は動き、結局Sam Altman氏はOpenAIのCEOに復帰しているというあたりは西田宗千佳氏のこちらの記事をお読みいただければよいかと思う。この一連の動きを今さら解説しても仕方がないし、そもそもOpenAIの元の取締役会がどういう理由でSam Altman氏解任に走ったかがいまだに不明な状況では説明のしようがない、というあたりもある。そんなわけでこの話をスルーすると、11月はあまり大きな動きは無かったとしてよいかと思う。ということで小ネタをいくつか。
AuroraがTOP500でランキング“2位”を獲得
2023年11月13日、全世界のスーパーコンピュータの性能ランキングを示すTOP500が更新され、ここにやっとIntelのAuroraがランクインする事になった。ただ、ランキングは2位を獲得したものの、いろいろ素直に喜べない内容になっている。
まず結果だけ説明すると、今回Auroraは585.34PFlopsをたたき出し、ランキング2位である。ちなみにトップのFrontierは2023年6月に性能を少し積み増しており、1194.0PFlopsで1位を4期連続で保持している。Auroraは理論性能1059.33PFlopsで、これは本来想定していた「理論性能で2PFlops超え」にはかなり差があるが、説明によれば今回のシステムは本来の構成の半分でのものとされている。Auroraは本来1万624ノード構成であり、52coreのXeon Max 9470が2万1248個、Data Center GPU Max 1550が6万3744個の構成になるはずである(図1)。ただ今回の結果から逆算すると、TOP500にエントリした構成は5439ノードで、全体の51.2%程でしかない。なので仮にフルシステムが稼働し、かつ結果がノード数にきちんと比例すると仮定すると理論性能は2069.19PFlops、実効性能は1143.35PFlopsになり、Intelの言っていた「理論性能2EFlops超え」がちゃんと達成できるし、実効性能でも1EFlopsを超えるのでExa Flops Systemを名乗ることも問題はない。
問題は、そのフルシステムでも微妙にFrontierに届かない(2022年6月にFrontierがランクインした時は実効1102.0PFlopsだったから、フルシステムが本当に1143EFlopsだったらランキング1位を取れた可能性があった)事ではなく、性能効率と消費電力効率が“超絶低い”事である。
まず性能効率。Frontierは今回理論性能1679.82PFlopsに対しての1194.0PFlopsなので、71.0%程。ちなみに以前は1685.65PFlopsに対する1102.0PFlopsだったので、65.4%程であり、1年で5%強の効率改善を果たした格好になる。対するAuroraはわずかに55.3%。恐ろしく効率が悪い。実際効率だけ見ると、TOP500の上位100システム内で見ても85位まで落ちてしまう。厄介なのは、これがノード数の多さに起因するものと考えられるためだ。Auroraと同じく、Xeon MaxとData Center Maxを搭載したシステムとしては今回初めて196位に入ったClementina XXIが挙げられる。こちらはアルゼンチン気象局のシステムで、最終的に15.3PFlopsの演算性能を持つ予定であるが、今回はその一部が稼働している格好だ。現状では160個のXeon Max 9462(32core)と296個のData Center Max 1550からなるが、こちらの性能が理論性能5.99PFlopsに対して実効性能3.88PFlopsで効率は64.7%ほど。まだFrontierにはちょっと遠いとはいえ、Auroraよりはかなり良い。ノード数は恐らく80程度(74ノードがXeon Max×2+Data Center Max×4で、6ノードがXeon Max×2のみ)と考えられるが、この程度の小規模なシステムであればそこそこの効率で動くという事でもある。ちなみにXeon Maxだけのシステムで言えば、例えば24位に入ったCrossroadは74.7%とFrontierを凌ぐ効率だし、114位に入った京大のCamphor 3など88%もの効率を示しており、別にXeon Maxに何か問題あるわけではない。Data Center MAXの方も、先に書いたようにClementina XXIはそこそこの効率を維持できている。ちなみにFrontierのNetworkそのものはHPEの提供するSlingshot-11を利用しているが、同じSlingshot-11をFrontierも採用している以上、Slingshot-11そのものが悪いという訳ではない。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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