大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
EVに吹く逆風 デンソーの焦りとロームが求める勝機とは(3/3 ページ)
EV市場失速が電力供給を「救う」?
ちょっとEVの話に戻るが、そもそもデータセンター向けの電力需要がここまで高まっている中で、もしもEV市場が順調に立ち上がったとしたらどうなったか?と考えると、そうでなくても足りない電力が、さらに不足することになりかねない。
国際エネルギー機関(IEA)が発表した2025年度におけるEVのエネルギー予測によれば、2030年におけるEVの消費電力は800TWhほどになっている。同じIEAによるAIデータセンターのエネルギー予測では、2030年でのデータセンター(AI以外も含む)の総合計はおよそ1000TWh。一方で2030年における総電力供給量は、World Energy Outlook 2025によれば3万5000TWhほどになると見込まれており、EVとAIデータセンターで全電力供給量の5%あまりを消費する計算になる。これを多いと見なすか少ないと見なすかは難しいところだが、2024年はEVが180TWh、データセンターが400TWhほどで、合計しても全電力供給量の2%に届かない程度だった。2030年の電力需要は、この2.5倍まで膨れ上がると予測されるわけだが、供給が追い付くのか?と考えると結構厳しい事になっただろうと筆者は考える。EV市場が失速したのは、AIデータセンターの電力供給にはむしろ良い事だったとすら言えるだろう。
こうした事を背景に考えると、デンソーによるロームの買収提案というのは、EV向けに生き残りを掛けたデンソーの焦りが見えるし、逆にロームと東芝、三菱電機の事業統合の基本合意書締結は、ロームがEV市場を見捨ててそれ以外に活路を見いだしているようにも思える。実はロームも800Vデータセンターに関してNVIDIAと協業を発表しており、少なくとも水面下で何かをやっているであろうことは確実である。デンソーの元でEV向けに進むか、3社による合併でEV以外のマーケットで生き残りを狙うか、どちらも茨の道であることは予測できるだけに、今後の展開が気になるところである。
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