大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
EVに吹く逆風 デンソーの焦りとロームが求める勝機とは(1/3 ページ)
日本のパワー半導体業界では、デンソーによるローム買収提案や、ローム/東芝/三菱電機の3社連合など、再編にまつわる話題が相次いだ。今回は、電気自動車(EV)市場に関する各半導体メーカーの見解を振り返りながら、パワー半導体の新たな成長市場についても考察する。
2026年3月はいろいろと話題が多かった。まずArmがIP(Intellectual Property)だけでなくCPUチップそのものの販売に踏み切った話(「Armが半導体の自社開発に参入、AIデータセンター向けCPU発表」)話はなかなかにインパクトがあるとは思うのだが、この背景に関してはMONOistの方で書いてしまったので今回は見送り。また3月16日から開催された年次イベント「GTC 2026」では「Vera Rubin」や次世代Feynmanの詳細に加え、新たに「Groq 3 LPU(Language Processing Unit)」もラインアップに加えた事が明らかにされたが、これももう幾つか報道があるのでちょっと見送るとして、今回はパワー半導体の再編成の話をちょっとしてみたいと思う。
「全てEV化」は当面先に
もともと2025年12月に、欧州委員会がエンジン車の新車発売禁止の方針を撤回する提案を提出した事に始まる一連の電気自動車(EV)化への逆風は、2026年に入って急速にその風速を増してきた感がある。その極め付きが、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)が開発していた「AFEELA 1」およびその後継の開発中止である(「ソニー・ホンダモビリティ、EV「AFEELA」開発中止」)。ものすごく長期的に言えば、いずれ内燃機関は廃れて全部EVに切り替わる日は来るかもしれないが、少なくとも直近ではないというのがほぼ確定した事になる。これはやはり、2035年のエンジン車廃止をにらんでEVの開発を進めていた自動車メーカーの戦略にも大きく関わる話である。いきなりEVの開発は全廃とまでは行かないにしても、エンジン車(というかエンジンそのもの)の開発を再開しなければならないから、その分、EVの開発が手薄になる事は避けられないし、そもそもEVの出荷台数の大幅な見直しは避けられないだろう。これは要するに半導体メーカーでは、EV向けパワー半導体の出荷量が大幅に減る事を意味している。
実のところ、昨年(2025年)5月にWolfspeedが倒産準備に入ったあたり(「Wolfspeed「破産申請準備」報道の衝撃、SiCパワー半導体業界の行方」)から、その傾向は見えていたように思われる。直接的には中国の安価な製品が大量に入ってきた事で価格競争力を失ったという話ではあるのだが、マーケットが拡大している最中というのはそもそもニーズが常にあるから、そこで価格競争による敗退というのは案外起きにくい。これが発生するのはマーケットの伸びが止まったあたりで、残ったマーケットを獲得するために価格競争に突入する形になるからだ。
半導体メーカーも「慎重目線」維持
この辺の動向の変化は、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)のメッセージを見ると分かりやすい。ルネサスは2022年5月に甲府工場の再稼働を決定し、2024年12月に稼働を開始した。この時には「EVやAIの普及/拡大に伴って必要となる電力の効率的な活用に貢献する」と説明しており、2025年1月からの量産開始を予定していたが、その後2025年4月の決算発表会では「需要不透明なので、特に期限を定めずに限界まで慎重目線を維持する」と量産の先送りを表明。現時点でもまだ甲府工場の量産開始のアナウンスはなされていない。それどころか2026年3月25日に開催した株主総会では、株主からパワー半導体の再編に参加するかを問われて「現時点でこの分野で規模の拡大を考える段階にはない」と明確に述べており、少なくともEV向けのビジネスは現時点では全く拡大傾向に無いとみている事が明らかである。
これは他のメーカーも同じである。図1は3月にTricoreベースの「AURIX TC4x」に関するSUBARUとの協業を発表したInfineon Technologies(以下、Infineon)の説明資料の1枚だが、右端の2025年/2030年のバッテリー自動車(BEV)のグラフを見ると、xEVの駆動系に向けた売り上げはそれほど多くなく、むしろソフトウェア定義車両(SDV)関連の売り上げが圧倒的に多くなる事を想定しているのが分かる。
Infineonももちろんパワー半導体を自動車向けに提供しているが、2030年までの売り上げで言えばEV向けのパワー半導体よりもそれ以外の方が大きくなる、と判断している訳だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界には好機 脱炭素×コスト削減×現場改善を実現するエネルギー戦略 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
CAE解析をAIエージェントに任せてみた 人は何を担うのか
-
2
「見て覚えろ」が通じない時代 製造業の保全技術はどのように継承すればよい?
-
3
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
4
スマート工場動向調査2026
-
5
はじめての化学工学まとめ(Part1)
-
6
QC活動の形骸化はどう防ぐ? 実効性のある業務へ転換する3つの解消策とは
-
7
自律走行搬送ロボット(AMR)の位置推定と自律走行はどこまで高精度化できる?
-
8
動き出したファナックの「フィジカルAI」
-
9
製造現場などを支える状態監視システム サンプリングの位相ずれを減らすには?
-
10
【読者調査結果】製造業の脱炭素動向調査2026
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー