宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(113)
誰が旗を振る? 「内部不正対策」は喫緊の課題(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。今回は、企業における内部不正対策について考えます。
ランサムウェアにフィッシング――。企業が対策しなくてはならないサイバー攻撃はたくさんあります。「うちには狙われるような重要情報はないよ」と考える人も、今では少なくなってきたとは思いますが、それでもセキュリティへの投資がなかなか進まない企業もあります。結果として、対応が進んでいる企業とそうでない企業の間で、二極化が進んでいる印象を持っています。
ここ最近は、サイバー攻撃という「外からの攻撃」に対する投資が一段落したのか、セキュリティベンダーがアピールするポイントが少し変わってきたように感じます。外部からの攻撃を「90%守る」から「99.9999%守る」へ引き上げるには、巨額の投資と組織体制の整備/強化が必要になります。しかし、それでも結局は「100%守る」ことはできません。こうした現実が、変化につながっているのではないかと思います。
また、外部からの脅威対策がそれなりに進んできたことで、防御力をさらに高めるよりも、“別の部分”を強化すべきだと気付き始めた企業が出てきたように感じます。こうした視点は、セキュリティ対策を進めてきたからこそ、初めて見えるものなのかもしれません――。そんな動向を垣間見ることができる報告書が公開されました。
外部脅威対策と同等に考える「営業秘密管理」
製造業の強みとは、その組織しか知り得ない、あるいはその組織でしか使いこなせないであろう「営業秘密」にあると思っています。日本の力の源泉ともいえるその秘密が、もしかすると他社の手に渡っているかもしれない――。それは、多くの経営者が抱えている大きな危機感ではないでしょうか。
情報処理推進機構(IPA)は2025年8月、「企業における営業秘密管理に関する実態調査2024」報告書を公開しました。これはまさに、営業秘密を巡る日本の現状を示すレポートです。2025年1月にWebアンケート形式で実施されたもので、従業員300人以下の製造業と非製造業、そして301人以上の製造業と非製造業、それぞれ300人ずつの情報をまとめたものです。
まず、過去5年以内に営業秘密が漏えいしていたかどうかについて、「明らかに情報漏えいと思われる事象が複数回あった」「一度あった」「おそらくあった」と回答した割合は全体の35.5%に上りました。これは、2020年調査時の5.2%から顕著な増加です。
さらに注目したいのは、「分からない/認識できていない」と回答した割合が、2020年の16.5%から9.7%に減少している点です。これは、これまでのセキュリティ投資によって内部不正の可視化が進み、実態を把握できるようになってきた結果と考えてよいでしょう。
数字の伸びは非常に気になりますが、「これまでも行われていた不正が、より明確に見えるようになった」と捉えるべきだと考えます。
もう一つ注目したいのが、「営業秘密の漏えいルート」に関する非常に興味深い結果です。
「外部からのサイバー攻撃による漏えい」の割合は36.6%となり、2020年調査と比べて大幅に増加していることが分かりました。これは、当時はセキュリティ対策がまだ十分でなかったことの表れともいえますし、近年、サイバー攻撃が激化し、想定以上に高度化していることを示しているともいえるでしょう。
ここで注目すべきは、その下に並ぶ項目です。
「現職従業員など(派遣社員含む)のルール不徹底(ルールを知らなかったなど)による漏えい」が19.5%から32.6%へ、「現職従業員など(派遣社員含む)による金銭目的など、明確な動機を持った漏えい」が8.0%から31.5%へ、「現職従業員など(派遣社員含む)がルールを知っていた上での誤操作や誤認による漏えい」が21.2%から25.4%へと、それぞれ増加しています。
このように、内部不正に起因する漏えいが上位を占め、しかも2020年の調査と比べて顕著に増加していることが明らかになりました。
さらに、内部不正に起因する漏えいルートを見ても、その対策が多岐にわたることが分かります。ルール不徹底や誤操作、誤認による漏えいは、意図しないものであり、昨今サイバーセキュリティ対策でも課題となっている「設定や周知の不備」と同様、ポリシー設定や教育での対策になるでしょう。
一方、金銭目的など明確な動機を持った漏えいは、意図的に行われるものであるため、正規の利用者の不正な行動を検出する仕組みが必要です。これまでの対策とは少し異なるアプローチが求められます。
例えば、正規のアカウントや権限を持っていたとしても、退勤後や早朝など通常とは異なる時間帯での操作、普段アクセスしないデータ領域への操作、あるいは通常と比べて異常に多いデータ量の操作といった行動を検出し、アラートを出す仕組みなどが必要です。ここにも、サイバーセキュリティ対策における振る舞い検知(UEBA:User and Entity Behavior Analyticsなど)を活用すべきでしょう。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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