大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Qualcommの狙いは何なのか、やたらと「高い」Alphawave買収額(2/2 ページ)
Qualcommも設計サービスの提供を狙う?
6月9日、QualcommがAlphawave Semiを買収した事が発表された。これに関してEETimesの記事(「次はデータセンター 「スマホ以外」にも手を広げるQualcomm」)では「AI/データセンター向けに進出か?」という論調で説明がなされていた。まぁ実際これはあり得る話である。同社は2017年に「Centriq 2400」というServer向けSoCを実際に製造して(図4)販売を試みたものの、2018年にビジネスを放棄している。余談だがQualcommでこのビジネスを率いていたのは、元IntelのMobile部門のSVPだったAnand Chandrasekher氏であるが、2018年5月にQualcommを辞している。
ちょっと話が逸れたが、ただQualcommは別にServerのビジネスを諦めたというわけではない。ことし(2025年)5月だが、LinkedInにこんな投稿があった。付け加えておくと、QualcommとMobile SoCのビジネスで有力な競合メーカーとなっているMediaTekは、2024年のComputexにおける基調講演で、既にAI Server向けのビジネスに参入する事を発表している(図5)ことを考えると、QualcommもServerビジネスに参入(というか再参入)を検討するのは不思議ではない。
ただ別にServer向けチップを作るだけなら、何もAlphawave Semiを買収する必要はなく、単にAlphawave SemiのIPを買うなり設計委託をするなりすれば済む話である。買収金額は24億米ドルと発表されているが、その金額に見合うだけのIPは存在しないだろう(高速SerDesやらUCIeやらを全部加味しても1億米ドルには行かないと考えられる)。Chipletの設計や実装に長けたエンジニアを確保する……と考えても、QualcommのServer向けチップの設計だけだとすると、絶対に持て余す事は疑う余地が無い。
筆者が疑っているのは、Qualcommが(これもMediaTekの後追いになってしまうが)Design Serviceのビジネスへの参入をもくろんでいるのではないか、ということだ。2024年10月にご紹介した「Arm対Qualcomm 泥沼化した特許係争はどう着地するのか」はArm vs Qualcommの特許論争について解説したが、2024年末にいったんQualcommが勝訴した判決が出たものの、ことし(2025年)3月に新たな進展がみられている。ただ当面QualcommはNuviaベースのコアを販売する事に支障はなさそうだし、かつArmベースの「Neoverse」などのコアを利用する事にも制限が掛からない。こうしたコアを利用してDesign Serviceを展開したい、という希望があっても不思議ではない。
MediaTekは既にこうしたServiceをスタートしており、公開されている最初の事例としてはNVIDIAのProject DIGITSに採用されているGB10のGraceチップの設計がある(プレスリリース)。実はAlphawave Semiの場合、このDesign Serviceが売り上げの中で結構大きな比重を占めており、IPの売り上げもいわばDesign Serviceと抱き合わせという面がある。Qualcommも単にServerに参入するだけでなく、Design Serviceも同時にスタートし、ここで自社のIPを積極的に提供するという機会を狙っているのではないか?というのが筆者の推定である。
Alphawave Semiの買収が完了するのは(規制当局からの横やりなどが入らなければ)2026年第1四半期の予定である。そのころまでには、もう少しいろいろ情報が出てくるかもしれない。
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