大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
DRAM業界をかき乱す中国勢、DDR4の供給の行方は?(2/3 ページ)
Samsungは早々にDDR4に見切りをつけたのか
なぜこんな現象が発生してしまったのか? もともとは4月22日、SamsungがLPDDR4の生産を2025年中に終了し、DDR5に移行する事を台湾Commercial Timesが報じたところから始まる。これによれば、Samsungの1z nmプロセスの8GB LPDDR4は2025年6月にLBO(Last Buy Order)、10月に最終出荷を迎え、ここでEOLになる事を顧客に通知したとされる。またこれに続き、同じ4月22日に中国EEWorldが、Samsungの1y nmプロセスのDDR4を使った8GB/16GBのメモリモジュールに関してもやはりことし6月にLBO、最終出荷はことし12月10日になるという話が報じられた。
この理由は明白である。一つは、DDR5ベースの製品の需要が急速に高まっている事である。PCやサーバのメモリは元より、モバイル向けももう主力はLPDDR5に移行してしまっており、そこに加えて広帯域メモリ(HBM)の需要の急速な高まりが昨年(2024年)から継続している。既にHBM4の仕様策定も終わっており、現在はHBM3eの生産に加えてHBM4への対応も当然進めている。こういう状況の中では、もうDDR4ベースの製品は既にお荷物になり始めているのは事実だ。であれば早い時期にDDR4ベースの製品を終息させ、生産ラインをDDR5ベースに転換したいのは当然である。
これに加えて、DDR4の値段が下落している(いた)のも問題であった。これは特に中国のCXMTやFujian Jinhuaといったベンダーが、米国メーカーの半額という猛烈な価格で販売をしていたことに起因する。特にCXMTの躍進ぶりが顕著であった。同社は2024年後半から18.5nmプロセスでDDR4メモリの量産を開始した。もともと同社は2022年には月産7万ウエハーを生産していたが、2024年にはこれが20万枚に増えている。もちろん、これが全量DDR4というわけではなく、もっと古いものも含んでの数字であるが。ことし4月のChosun Bizの記事によれば、CXMTは2024年、162万個のDRAMを出荷していて、ことし(2025年)は273万個の出荷を予定しているとされる。昨年第1四半期の同社のDDR4の出荷量は10万個でこれはSK hynixの4分の1でしかなかったのが、ことしの第1四半期には倍の20万個、今後は月産30万個に向けて増強しているという予測がなされていた。それでいて価格はSamsungやSK hynixの半額なのだから、先行3社にとってはたまったものではない。このままでは2025年末にはDRAMベンダーが従来の3強からCXMTを含めた4強になる、という予測もされていた。
こうなってくるとSamsungにとってDDR4のビジネスは手間ばかり掛かってもうけの無いビジネスという事になる。であればDDR4に見切りをつけて、DDR5に集中するという戦略そのものは妥当なものと考えられる。
ついでに言えば、もちろん全量がDDR4ではないとはいえ、300mmウエハーを月産20万枚処理していながら、DDR4の出荷量が月産20万個というのはなんか少なくないか?という気はするのだが、正直決して歩留まりは良くないようだ。DDR5の話になるのだが、2024年12月のBusiness Koreaの記事によれば、CXMTはDDR5の量産に成功したと発表したものの、そのYieldは10~20%程度と見積もられていた。DDR4はもう少し現実的な数字だと思われるのだが、それでも決して高くはない程度で、それを安売りするのだから、まともに付き合っていたら泥沼に引き込まれることになる。もちろん、CXMTのDDR4の信頼性は? と言われるとこれはいろいろ厳しいものがあったようだが。そんな訳でCXMTは引き続きDDR4をメインにビジネスを続けてゆくというのが基本姿勢で、DDR5の量産に入るまではもう少し時間が必要であり、その間にDRAMセルの高性能化を図る事でCXMTとの差別化を図れる、というのがSamsungの判断だったと思われる。
SKやMicronも、Samsungに追従
このSamsungの動きに、SK hynixやMicronも追従することになった。これらのメーカーにとっても状況は同じである。SK hynixは2024年8月に1c nmプロセスを利用したDRAMの開発を完了し、今年から量産を開始。同様にMicronも極端紫外線(EUV)リソグラフィを利用した1γ nmプロセスの開発を昨年完了しており、今年2月からサンプル出荷を開始している。CXMTがこれに追従するのは難しいと考えており、収益性の悪化したDDR4から撤退して製造設備を先端のDRAMに向けようという方針は至極当然の事である。図2で4月26日にややDDR4の値段が上がり、5月15日に更に上がったのは、DRAMトップ3社が相次いでDDR4の生産終了をアナウンスした事と無縁ではないだろう。
ただこれで終われば、高信頼性が必要なDDR4に関しては結構価格が高騰する事は予測されるが、こうした用途にはNANYAとかWinBondなどの台湾DRAMベンダーが引き続きDDR4の供給を続けているから、市場から払底するという事にはならないと予測される。その一方で、そこまでの信頼性が必要ではない用途に関してはCXMTが引き続き大量に供給を行う事で、平均するとDDR4の価格が長期的に微妙に上がるかな、という程度で済むと予測されていた。この予測がひっくり返ったのが、冒頭で説明したCXMTのDDR4の生産終了という話である。こうなると、DDR4の絶対的な生産量が足りないという事になりかねないからだ。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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