大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ソフトバンクが買収したAmpereの「流転の生涯」をたどる(2/3 ページ)
2001年以降、常に赤字だったAMCC
そんなAMCC(というか、2009年に社名をAppliedMicroに変更、略称もAMCCからAPMに変更していた)が、2013年に突如発表したのがARM v8Aへの移行である(Photo03)。4命令のOut-of-Order構成のパイプラインを持つ64bitプロセッサを投入した理由について「これまではMIPSやPowerPC、それと32bit ARMが市場には混在していたが、64bitマーケットはARMに統一されるから」と説明した。同社は2010年にARMからARM v8Aのアーキテクチャライセンスを取得、2013年にまず「X-Gene」というコアと、この「X-Gene」を利用した「Helix」と呼ばれる汎用プロセッサを発表する。このX-Geneは40nmプロセスでの製造という事もあり、いまひとつ動作周波数は上がらなかったが、同社はこれに続き2014年には28nmに微細化した「X-Gene 2」と、これを利用した「Helix 2」を発表。そして2016年には16nmを利用した「X-Gene 3」が発表されるが、これを搭載した「Helix 3」になるはずだった製品は最終的に出荷されなかった。
というのはAPMそのものの売り上げが2011年をピークに次第に減少傾向をたどっていたからだ。売り上げはそれでもまだいい方で、営業利益に至っては2001年以降常に赤字となっており、そもそも会社がここまで維持できたことが不思議なくらいであったが、ついに立ち行かなくなる。APMは2016年11月、MACOM Technology Solutionsに買収されることが発表され、翌2017年1月に買収が完了した。
MACOMは同業というか、ネットワーク向けの高速通信向けとかレーダーなどを手広く扱う企業であるが、Processorに関してはビジネスの範囲外であり、またAPMを買収してもその資産を生かしてProcessor Businessに参入するといった意向は持ち合わせていなかった。かくしてAPMの資産の中でProcessor部門は2017年10月、投資ファンドであるCarlyle Group傘下のProject Denver Holdingsに売却されることになった。
Intelの元社長Renee James氏が合流
幸運というかなんというか分からないが、これに先立つ2016年2月、Intelで社長を務めていたRenee James氏が離職、Carlyle GroupにOperating Executiveとして入社していた。James氏はAPMのProcessor部門買収のためにProject Denver Holdings LLCを立ち上げ、同部門の指揮を執ることになる。そのまま同部門は2018年にAmpere Computingとして会社組織となる。ただ同社はまだその時点ではCarlyle Groupが100%の株を保有する、事実上の子会社であった。
そんなAmpere Computingが2018年5月に発表した最初の製品が「eMAG 8180」という32コアのサーバ向けCPUである。利用されるのはSkylarkコアであるが、これは要するにX-Gene 3そのものである。APM時代、X-Geneシリーズをベースとしたプロセッサはネットワークだけでなく組み込み向けをターゲットとしていたが、Ampere Computingではクラウドサーバなどにターゲットを変更した。そこで、コアそのものはX-Gene 3ベースながら、Cloud Server向けに設計を変更した形だ。
ただこれに続く「Ampere Altra」(2020年3月)/「Altra MAX」(2021年)は、Armの「Neoverse N1」ベースとなった。X-Geneシリーズは、Ampereのターゲットとしたクラウドコンピューティング向けに適したとはいえない設計であり、手直しというよりもスクラッチから作り直した方が賢明と判断された。ただそのためには相応の時間が必要になる。なのでその間をNeoverse N1ベースのCPUで埋めよう、という戦略そのものは妥当なものである。そして2024年の「Hot Chips」で、同社は独自アーキテクチャに基づく「AmpereOne」の量産開始とこの後のロードマップを公開している(図4)。ただ5nmのAmpereOneまでは製造できたが、まだこの先には3nmの「AmpereOne MX」や、時期的には2nmを視野に置いていると思われる「AmpereOne Aurora」が控えており、これらの製造にはさらなるコストが必要である。この経費を賄うに十分なだけの売り上げが立っていたか?というと、これは非常に問題であった。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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