宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(104)
身代金、払うべきか払わないべきか、それだけが問題か?(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。今回は、ランサムウェア攻撃を受けた際に、身代金を払うべきか、払わないべきか、それ以前に何をすべきかについて取り上げる。
「闇バイト」は身近に迫る犯罪です。SNSで募集された内容が“実は犯罪”につながるものだった――という報道が増えています。一連のやりとりの中で、犯罪者はいわゆる匿名化チャットアプリである「Signal」や「Telegram」といったツールのインストールを促し、「絶対にバレない」という表現であなたを引き込もうとします。これらのアプリの名前は聞いたことがあるかもしれません。
しかし、これらは本当にバレないのでしょうか。確かに“通信系路上”では強力な暗号化が行われ、外部から盗聴することは困難です。ですが、あなた自身はチャットの内容を見ることができます。つまり、警察があなた、もしくは攻撃者の「端末」を、ロックしていない状態で確保できれば、やりとりの内容は全て確認できます。印象だけで「バレない」と考えて、安易に犯罪に加担することは大変危険であり、確実に捕まります。万が一、今そういったバイトに関わっているのであれば、すぐに助けを呼んでください。
多くの報道では、SignalやTelegramといったツールを使わないよう呼び掛けているかもしれません。しかし、企業のシステム担当者、加えて経営層は、むしろ一度はこれらのツールを触っておくべきだと筆者は考えております。その理由を以下で述べたいと思います。
ランサムウェアの身代金「払う」or「払わない」で悩むのは間違ってる?
その理由ですが、何かと話題となるランサムウェアが「匿名化技術」を多数活用して構成されているからです。例えば、犯人とのコミュニケーションは、先の匿名チャットツールが使われますし、「リークサイト」と呼ばれるデータを公開するためのWebサイトは、普通のWebブラウザでは到達できない、経路が暗号化される“特別なWebブラウザ”を利用する必要があります。また、身代金は暗号通貨で決済するため、ウォレットのIDは分かったとしても、その先にいる人間まで特定するのは難しいでしょう。これらを一つ一つ解き明かすのは大変困難です。だからこそ、「ランサムウェアの被害は増え続けている」ともいえるでしょう。
ランサムウェアの話題は「どうやって防ぐか」という話とともに、「身代金を支払うか否か」という点が注目されています。筆者の結論は「払うべきとも、払わないべきとも断言できません」です。なぜなら、奪われたデータの内容、システムの重要度により、判断基準がさまざまだからです。
そもそも、「身代金『払う』or『払わない』」というのは、その命題が間違っているという指摘もあります。先日、セキュリティベンダーのウィズセキュア 脅威インテリジェンス部門ディレクターのティム・ウェスト氏が来日し、記者に向けてラウンドテーブルを開催した際、支払いを行っても、ランサムウェアギャング内での“詐欺”が発生し、実際に攻撃した犯罪者が分け前をもらえなかったという事例を紹介していました。かつては身代金を支払ってもらうために、攻撃者も「信頼」を積み重ねてきましたが、どうやらそれは過去の話のようです。
この点からも、「身代金を支払うべきではない」というのが基本になりそうですが、ウェスト氏は身代金を支払うとしても、「その前に『交渉』があるべきだ」と述べています。基本的に、攻撃者は高額な身代金をふっかけてきます。ですが、その金額に裏付けなどないため、多くの場合は攻撃者側と“交渉”することで、その金額はほぼ確実に下がるだけでなく、「うまくいけば選択肢が増える。悪くても時間を稼げる。支払わないとしても漏えいに備えて準備ができる。交渉は良い手段だ」とウェスト氏は説明していました。
つまり、身代金を支払うか/支払わないか以前に、「交渉」というカードを切るべきなのです。その交渉には、最初に触れた匿名化チャットアプリが活用されます。交渉を行うのはシステム担当者や経営層になるでしょう。いつか来るかもしれないその日のために、これらのアプリを使ってみることは準備として重要だと思います。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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