大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
組み込みの「一番根っこ」を狙うか否か 戦略が別れる小規模FPGAの現状(3/3 ページ)
Infineonとは真逆のアプローチを見せたMicrochip
さて、これと真逆のアプローチを見せたのがMicrochipである。2024年1月24日、MicrochipはPIC16F13145 Familyを発表した。型番から分かる通り、MicrochipのPIC16シリーズのMCUで、スペック的にはミッドレンジの8ビットCPUモデルだが、CLB(Configurable Logic Block Module)を搭載した初めての製品である。このCLBとは何か? というのが図4。CLBは32個のBLE(Basic Logic Element)から構成される。おのおののBLEは、
- AND/OR/NAND/NORゲート
- Buffer/Inverting Buffer
- D flip-flop
- JK flip-flop
- Multiplexers
- 4-input LUT
としてふるまうことができる。ちなみに個々のBLEのPropagation DelayはTypicalで6ナノ秒未満なので、4つのブロックに分かれたBLEを(Inter Connection Matrix経由でぐるっと回して)32個直列につないでも、レイテンシは192ナノ秒程度。出力部のバッファとかConnectionのDelayまで加味しても200ナノ秒程度で処理が終わるから、フルにつないでも5MHz程度で動作する計算になる。
実際にはそんな極端な使い方はしないと思うが、PIC16コアそのものは32MHzで動作するから、CPU Cycleで言えばおおむね6cycleか7cycle程度で出力が得られる計算だ。8直列程度なら50ナノ秒程度、20MHzで動く計算になるから2cycle未満のレイテンシで出力が得られる訳で、これはMCUのアクセラレーターとしても使えるし、Glue Logicとしても十分機能する速度だ。「たった32ブロックか」という声も出てきそうだが、なんとこのBLEはOn-the-Flyで動作を変更できるDynamic configuration機能まで搭載されているため、必要ならBLEの構成をダイナミックに変更することでより複雑な処理を実行させることができる(さすがにこれをやると時間がかかる事は否めないが)。
もともとMicrochipはCIP(Core Independent Peripherals)と呼ばれる機能をPIC MCUに提供しており、2016年にはこのCIPをAVR MCUにも導入しているのだが、今回登場したCLBはこのCIPの進化型と考えられる。要するに、Glue Logic的な要素をMCUの側に取り込んだ形だ。
真逆のアプローチから見えてくること
MicrochipとInfineonの、Glue Logicに対する真逆のアプローチをどう考えるべきか? 要するにEmbeddedの“一番根っこ”の部分ではまだまだGlue Logicは必要となる。そこに向けてAddressしているのがMicrochipだったりLatticeだったりする訳だが、逆にここは個数は出ても(何しろ単価が安いから)売り上げは伸びないし利幅も薄い。であればそうした部分は切り捨てて、より単価と利幅が稼げるマーケットに集中した方が会社の成長につながる、という考え方がAMDやInfineonなのだろう。どちらが良いとか悪いという話ではなく、会社の方針の違いという話なのだが。ここで興味があるのが、新生Alteraである。ローエンドにMAX 10 FPGAのほか、前世代製品であるMAX V CPLDもまだオーダー可能にはなっているので、その意味ではどちらかと言えばMicrochipやLattice同様にEmbeddedの一番下の所にAddressしているように見えなくもない。だが、今後もこの路線を継承するのか、それともAMD同様、より大容量/高性能の方にシフトしてゆくのか、今後の動向を注視してゆきたい。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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