大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
組み込みの「一番根っこ」を狙うか否か 戦略が別れる小規模FPGAの現状(2/3 ページ)
正反対のアプローチを見せたMicrochipとInfineon
何で突然こんな話を始めたかと言うと、MicrochipとInfineon Technologies(以下、Infineon)が、全く異なるアプローチを見せてくれたからだ。まずInfineon。2024年3月5日にIoT(モノのインターネット)やワイヤレスなどを扱うICW事業部のSam Geha氏が来日して記者説明会を行ったが、この説明会の中でGeha氏が明確に述べたのは、「PSoCのPは、もはやProgrammableの意味ではない」ということだった(「今後は「PSoC」ブランドを前面に――Infineonが非車載用マイコンの戦略を発表」)。
もともとPSoCは"Programmable SoC"の略であった。このProgrammableとは何か?という話だが、初代のPSoC(PSoC 1)は、CPUコアはM8Cという旧Cypress独自の8ビットCISCコアで、性能は24MHz駆動時で4MIPSだったから、2002年の発表時点でもそれほど高性能とは言えなかった。ただこれを補って余りある特徴が、Digital BlockとAnalog Blockの存在である(図1)。先にAnalog Blockの説明をしておくと、これはContinuous Time(CT)とSwitched Capacitor(SC)の2つから成り、これの組み合わせでさまざまな動作を実現する事が可能だった。
実際PSoCの設計ツールであるPSoC Designerには、このAnalog Blockを組み合わせて利用できるUser Moduleとして
- ADC(Incremental/ΔΣ/SAR)
- Amp(OpAmp/PGA/Comparator)
- DAC
- Filter(BPF/LPF)
- EEPROM Emulator/LCD Controller
- Multiplexer
などが利用可能となっていた。変なところでは、DTMF Dialer(プッシュフォンのボタン音生成機能)なんてものもあったりした。精度として言えば、例えばADCだとΔΣで8ないし11bit、SARだと6bitなので、こうしたADCをハードウェアの形で周辺回路に搭載しているMCUには敵わないのだが、全てのMCUの用途に12bit精度のSAR ADCが要るか? といえばそんなことはない(そもそもADCやDACを使わないケースだって少なくない)。必要となる周辺回路を、Analog Blockの組み合わせで実装することで効率的に実現できるのがPSoCの強みの一つである。
そしてもう一つのDigital Blockの方だが、こちらはDBB(Digital Basic Block)とDCB(Digital Communication Block)から構成される。これらを組み合わせることで、
- PWM/Counter
- 8bit UART
- SPI Master/Slave
- I2C Master/Slave
- CRC Generator/Checker
- PRG(Pseudo Random Generator)
などを構成できるようになっている。
このDigital Blockは続くPSoC 3/4/5ではさらに強化され、UDB(Universal Digital Block)と称されるようになった(図2)。このUDBの中身は?というのが図3である。12入力/4出力のCPLDが2つとデータバスから構成される格好だ。何をさせるかで構成が変わるから、単純にLUTに換算するのは難しいが、このCPLDの内容を4入力LUTで置き換えようとしたら最低でも4つ、場合によっては10個くらい必要になる。つまりPSoC 3に搭載された24個のUDBには48個のCPLDが搭載され、4入力LUT換算で言えば500個近いLUTが搭載されている計算になる(もちろん、これはCPLDのAND/OR Matrixをフルに利用した場合の換算だが)。これは先に紹介したIGROOとかICE40 LPのローエンドに匹敵する規模で、もうちょっと頑張るとForge FPGAに近いところまで行けるかもしれない、という感じである。
PSoC 5はPSoC 3と同じ構成ながら、CPUコアをCortex-M3に強化したバージョン(PSoC 3は8051互換コア)。そしてPSoC 4はCortex-M0+になり、またAnalog BlockやUDBを搭載するのはPSoC 4200シリーズのみで、UDBの数も最大8つに削減されてしまった。そのあたりもあって、PSoC 6ではAnalog BlockやUDBの数を大幅に増やしたモデルが投入されることを期待していたユーザーは多かったのだが、結果は? というとPSoC 6200シリーズのみにUDBが搭載され、最大12個というPSoC 3/5と同じ構成である。もちろん、周辺回路そのものはPSoC 3/5より強化されているので、UDBを利用するニーズそのものが以前より減った、ということはあると思うのだが。ここでGeha氏の話に戻す。「PSoCのPは、もはやProgrammableの意味ではない」という発言は、Geha氏が説明した次世代のPSoCにUDBなどは入るのか? という質問に対する回答の一部である。つまりInfineonとしては、もうMCUにUDB的なGlue Logic向けの回路を用意する予定がない、ということを明確に示したわけだ。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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