大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
IntelがPSG(FPGA部門)を独立させる本当の理由(3/3 ページ)
この動向は売り上げの数字にも如実に示されている。グラフは2015年~2021年のNet Revenueの数字をForm 10-Kから拾ったものだ。厳密にいうとAltera/Intelは12月末日締め、一方Xilinxは3月末日締めと決算日が異なる関係で、この数字を直接比較するのは厳密には正しくないのだが、まぁ傾向を見る分には差し支えないだろう。
2018年まではなんとか互角だったXilinxとAltera/PSGだが、2019年以降はものすごく大きな差になっているのが分かる。要するに5Gの基地局のビジネスを大量に取れたXilinxと取れなかったPSG、と考えれば分かりやすい。ちなみに2022年の数字が無いのは、Xilinxの方はAMDに買収され、Embedded部門と一体化されてしまい、FPGAだけのビジネスの金額が非公開になってしまったからだが、Intelの方はなんとForm 10-KからPSGの数字が落とされてしまった。というのは2022年末で減損処理を行っている事が示されており(図3)、売り上げの数字も“All others”に含まれてしまったからだ。もうこの時点でIntelはPSGに見切りをつけていた、というのが正確なのかもしれない。
2019年、IntelはAgilex FPGAの発表の際にこんなロードマップを示していた(図4)。まずFPGAでロジックを実装し、それをeASICに置き換えてコスト削減を図り、さらに数を量産する場合はASIC化するというものだ。これも地味ながらIntel Foundryの目玉だったはずである。ところがその肝心のIntel Foundryが、10nmプロセスの遅れをモロにくらって立ち行かない状況が続いていた。これはeASICのビジネスも直撃しており、それまでTSMCをターゲットとしていたのをIntel 10nmに移行する(この時の説明では次世代製品からIntelで製造する、という話だった)予定だったのが、いまだにそれが出てこない。つまりこの図4がまさしく絵に描いた餅のままの状況が続いているわけだ。この状況でeASICを使おう、という顧客が居るはずもない。
こうなってくると既にPSGはIntelにとってお荷物と化していたのは間違いない。そして2023年2月の記事でも書いたが、Intelは今後毎年30億ドルの経費節約を行うとしており、2023年中にはラボその他の建設やPathfinder for RISC-V Programを中止している。これに続き、2024年にはPSGをスピンアウトさせる事で経費削減の一助としよう、というわけだ。
ついでに言えばリリースの中で、PSGをIPOさせる事をもくろんでいることを明確に述べている。
Our intention to establish PSG as a standalone business and pursue an IPO is another example of how we are consistently unlocking more value for our stakeholders
単に経費削減だけでなく、IPOによって資金が集まれば、よりIFS向けの投資資金の原資を確保しやすくなる。ただIntelがこのIPOでどの程度の金額を予定しているのかは不明だが、ここまで説明したように既にPSGの企業価値はかなり棄損されているように思う。現在独立系FPGAベンダーのトップはLattice Semiconductorであるが、同社の時価総額はおおよそ76億ドルほど。Agilexファミリーは確かに高性能なFPGA/SoCであるが、だからといってLatticeを上回る価格が付くか?というと筆者は疑問である。少なくとももともとの買収金額である167億ドルには及ばなそうだ。
ところでこのPSGは2024年1月1日にスピンアウトするが、その新会社のトップが現在DCAIのトップであるSandra Rivera氏が務める、というのもまた何とも言えない気になる。一般には降格人事と取られても不思議ではない。Sapphire Rapidsの製品投入遅延の最終的な責任者はRivera氏になるからだ(実際には彼女の責任はそう大きくないとは思うが、地位に付随する責任からは逃れられないのは仕方がない)。ただ個人的には「泥船から逃げた?」という気もしなくもない。そして次の槍玉に上がるのは、Raja Koduri氏無きAXGだろうか。まだまだIntelは落ち着きそうにない。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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