大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
5社が共同でRISC-Vベースプロセッサを開発、その狙いは?(1/2 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回はBosch、Infineon、Nordic、NXP、Qualcommの5社が共同でRISC-Vベースのプロセッサを開発する企業を設立するという動きについて紹介する。
2023年8月の大きなニュースと言えば、IntelによるTower Semiconductorの買収が破談になったことだろうか。ただこれ、要因は政治的な側面が非常に強い話で、既に半導体業界の枠を超えた議論になるし、EE Times Japan永山記者の話以上の情報はないので今回は見送りする。ちなみに9月に入り、IntelとTower Semiconductorは新たな提携を発表。Intelのニューメキシコの後工程設備をTower Semiconductorが利用できるようにすることを発表したが、多分これ買収が成立していればもっと効率的に協業できただろうに、と思わざるを得ない。
という訳で今回のお題だが、2023年8月4日にBosch、Infineon、Nordic、NXP、Qualcommの5社が共同でRISC-Vベースのプロセッサを開発する企業を設立する事を発表した話を取り上げたい。プレスリリースは各社(Bosch Infineon Nordic NXP Qualcomm)からリリースされているが、中身は同じである。
このリリースによれば、5社は共同でドイツに設立されるRISC-Vベースの商用プロセッサを設計する企業に出資を行い、業界で広く利用されるソリューションを確立する事を目的とする。最初のターゲットは自動車であるが、最終的にはMobileやIoTもターゲットにするとしている。
この動きは実に興味深い。まず今回名前の挙がった5社のうち、4社は既にRISC-V Internationalに加盟している。Infineon/Nordic/NXPはStrategic Memberで、QualcommはFounding Member(Premier Member)である。つまり現時点でBoschのみが未加盟である。ただし、この5社はいずれもRISC-Vベースのコアも製品も持ち合わせていない。つまり、現状これらのメーカーが何かしらRISC-Vベースの製品を構築する場合、新規にコアを作るか、あるいはどこからかRISC-Vのコアを買ってくる必要がある。ここで問題は、
- そもそもRISC-Vに対応すべきか?
- RISC-Vに対応するとして、そのコアは外部から購入するか、自社で開発するか?
の2つである。まず1つ目については、正直言えば今のトレンドを見る限り「対応しないという案はない」と言える。例えばRenesasは2021年4月にSiFiveと共同で車載向けのRISC-Vコアの開発を行う事を発表しており、また汎用向けとしては台湾Andes TechnologiesのAX45MPコアを搭載したRZ/Fiveを2022年3月に発表している。ただ同社は外部からCPU IPを購入するのは「製品投入するまでの時間を短縮するため」と割り切っており、こうした製品投入と並行して自社でもRISC-Vコアを開発している事を2021年に発表しているという話は以前こちらで説明した通りだ。またデンソーは子会社であるNSITEXEが以前からRISC-Vプロセッサを手掛けており、2021年8月には独自のNS31Aコアを搭載したISO26262 ASIL-D対応製品をリリースしている。他にもAndes Technologies、米Codasip、仏Cortusなど多くの企業が車載向けグレードのCPU IPを提供し始めている。
これを利用するためのソフトウェアも次第に準備が整いつつある。米GreenHills SoftwareはRISC-Vに対応したRTOSおよびソフトウェア開発環境を用意しており、Andes Technology/Lattice Semiconductor/Microchip/NSITEXE/Renesas/SiFiveの各プロセッサIPへの対応、それにISO26262の認証もカバーしている。IARもRISC-Vの車載環境に対応したツールの提供を開始しているし、Automotive Grade Linuxも2020年にRISC-Vへの対応を開始しているという具合に、車載向けにRISC-Vプロセッサを利用するための土壌が形成されつつある。なので自動車メーカーあるいはTier 1が「次の自動車向けにはRISC-Vを使いたい」と考えた場合、それは既に可能である。
これは逆に半導体メーカーにとっては「RISC-Vプロセッサへの対応がない場合、その商談を取り逃す」事につながる。これがArmであれば、「RISC-VプロセッサよりArmが優れている理由」を20個位並べて翻意させようと努力するかもしれないが、半導体メーカーは「顧客ニーズに沿う」形でビジネスをしている以上、そこまでArmに肩入れする必要はないし、顧客がRISC-Vプロセッサを望む可能性がある以上、対応しないという選択肢はない。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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