宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(87)
工場だって「ボーダーレス」 重要な“検知”スキルを身につける手引き書を読む(2/2 ページ)
侵入検知製品の選び方……のその前に
本書では、産業用制御システムにおける侵入検知製品の選定ポイントや、知っておくべき機能が簡潔にまとめられています。まずはぜひ、しっかり読んでいただきたいと思います。
その中でも私が気になったのは、各種方式がある侵入検知製品について、どんな提供価値があり、それを“誰が”提供するのかという点を簡潔にまとめたチャートです。例えば、IDS ベンダーが提供する「IDS」一つを取ったとしても、設計・開発/購入先/構築・導入/運用監視のそれぞれには、これだけのパターンが存在します。
これは非常に重要なポイントだと思います。もはやセキュリティ機能は、製品を買って電源を入れれば、未来永劫に欲しい機能を提供してくれるわけではありません。運用監視はもちろん、そのサポートがどこまで提供されるかを継続的に把握する必要があります。サイバー攻撃が進化する事により、防御側もアップデートが必要となるでしょう。その際に、一度構築した防御の仕組みを見直す必要も出てきます。その際、それは自分で行うのか、それともベンダーに協力を得られるのか、その協力はどの程度まで深く期待できるのかなど、見ようとしなければ見えない課題が隠されています。間に入る代理店やベンダーの契約も考えなくてはならないことが、このチャートから分かります。これは侵入検知に関する製品のみならず、全てのセキュリティ製品にも見直しが必要かもしれません。
また、もう一つ気になったのは「セキュリティ対策製品の統合運用」という考え方です。これは下図できれいにまとめられています。
これも、最近多くのベンダーがアピールする点です。かつてはさまざまな単機能の製品を積み重ね、多層防御を実現してきたかもしれません。その結果、機器同士での連携が難しく、侵入検知製品はアラートを上げていたが、ネットワークの遮断などの対策ができていないといった、非常に残念な状況になっている現場も多いかもしれません。人が介在しなければならないとなると、今のサイバー攻撃のスピードにはついていけないのが現状です。
運用が煩雑にならないためには、セキュリティ製品を少なくし、1つのプラットフォームで運用できる仕組みが求められます。これもおそらく、多くの方が納得できる論法であるかと思います。特に製品が減る=コストが減ることで経営者の理解が得やすいかもしれません。問題は、これまで慣れ親しんでいた製品を取り上げられるセキュリティ担当者かもしれませんが、目の前のサンクコストにしがみつくのではなく、新しい仕組みで守ることを考えてみてください。特に最近の製品は、アップデートすると機能が拡張されたり、設定が増えてこれまでできなかったことができるようになることも多いです。積極的にテストして、それなりに必要十分な機能が手に入れられるようであれば、古い製品を切り捨てる勇気が必要なのかもしれません。
いまこそセキュリティ機能拡充のとき
いま、多くのサイバー事故が起き、実際に工場が止まる、サプライチェーンが止まるといった報道も少なくありません。報道の裏には、小さな事件が数え切れないほど起きていると考えるべきでしょう。経営者の意識も高まる今が、根本的な対策を入れ込む好機と考えてみるのはいかがでしょうか。
もちろん、これは「投資」であり、経営者の判断が必要です。本書では経営層への報告も重要とし、どのタイミングでアラートを上げるかだけでなく、定期的にレポートを行うこと、そして訓練を行うことも重要だとしています(61ページ)。
本書は数時間あれば一通り読めるレベルの、まとまった資料です。ぜひ、一度目を通しておいてください。そして、自社で何ができそうか、ぜひアクションを取っていただければと思います。
著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さんに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー