大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
GlobalFoundriesがIBMを提訴/TSMCの3nmプロセス「N3」にまつわる話(3/3 ページ)
ただ業界では別の話もささやかれている。それは、Applied Materialsが2023年2月に発表したCentura Sculptaを導入するので、Double Patterning用のEUV露光機を減らしたのではないか? というものだ。SculptaはPattern Shaping Technologyと説明されている。その基本的なアイデアはこちらの動画が詳しいが、要するに「EUV露光を済ませた後、電子ビームを使って削った部分をさらに広げる事で、結果としてDouble Patterningと同等の配線の細かさを実現する」というアイデアである。
このSculpta、説明そのものでは「どうやって削るか」は明らかにしていないのだが、そもそも2月28日に2023 SPIE Advanced Lithography + Patterning Conferenceでこれを発表した際には、Sculptaに加えてVeritySEM 10と呼ばれる「従来型SEMよりもより効果的に形状を観察するためのシステム」も発表している。同社は2022年12月、次世代電子ビーム技術としてCEM(Cold Field Emission)電子ビームと呼ばれる方式を採用した製品を発表しており、VeritySEM 10もこの延長にあるものと思われるが、これの出力をより引き上げてパターンを削れるようにしたものがSculptaであろうと想像される。
Sculptaを使うメリットは、EUVより低コストなことだ。EUV露光機はその装置コストもさることながら、稼働時の消費電力が1MWという点も問題であり、EUVでDouble-Patterningを利用すると電気代が倍増する事になる。Applied Materialsによれば、Sculptaの消費電力はEUV露光機に比べるとかなり少ないため、エネルギーコストを大幅に抑えられるという話である。
もっとも現状Sculptaのスループットとか消費電力、制約条件(どんなパターンでも無条件で削れるとも思えないので、何かしらの制約は入ると思うのだが、そのあたりは明らかではない)は不明なままであるし、発表のリリースにTSMCはコメントを寄せていないが、それがむしろ怪しいとされている。
現実問題として直近でこれを使う可能性は低い(EUVのDouble-PatterningとEUV+Sculptaでは明らかにマスクが異なるので、既存のTape-outした設計をそのまま持ち込むことはできないし、場合によってはPDKそのものが変わる可能性もある)とは思うが、この先のN3P/N3Xや、GAAを利用するN2ではひょっとすると使われる可能性もあるかもしれない。
それならいっそ電子ビームで全部済ませば、と思われるかもしれないが、電子ビーム露光はEUVに輪をかけてスループットが低い(条件次第だが、スループットがそれこそ数枚/時とかのオーダーである)事を考えると、逆にSculptaがどこまでのスループットを出せるのか気になるところである。現状EUV露光機は170枚/時程度までスループットを上げているのだが、これに負けないだけのスループットが出るのか、もう少し細かい情報が開示されるのを待ちたいと思う。
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