大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
GlobalFoundriesがIBMを提訴/TSMCの3nmプロセス「N3」にまつわる話(2/3 ページ)
TSMCのN3にまつわる話
TSMCは2023年4月26日に2023 Technology Symposiumを開催した。これは一連のロードショーの最初のもので、このあと5月にはオースチンとボストン、次いで台湾/ヨーロッパ/イスラエル/中国と続き、6月30日には日本でも開催される。さてこのTechnology Symposiumで話題になったのは当然3nmのN3と続くGAAを使った2nmの話である。この内容の要旨はこちらにまとまっているが、2nmに関しては2025年の導入を目指して順調、という以上の話ではない。とは言え、既にCadence/Siemens Digital/Synopsysの3大EDAベンダーがN2への対応完了をアナウンスしているから、IPベンダーなどは既にN2への対応を始めている格好だと思われる。
それはともかくとしてN3およびN3Eだ。N3はFinFlexと呼ばれる、PMOSとNMOSのFinの数を選べる構成にすることで、動作周波数とエリア面積を選べる仕組みを取ることが発表されていたが、2022年12月29日にはFab 17での開所式も開催され、順調に量産に入ったことになっている。もっとも実を言うとこのN3プロセスはいろいろ量産の難易度が高いもので、それもあって本来後継に位置されていたN3Eが「N3プロセスの製造容易化版」として新たに投入され、主要なチップベンダーがN3ではなくN3Eに乗り換えをしている。ではN3は空いているのか? というと、2月26日付のDigiTimesが「TSMCのN3の製造枠はAppleが押さえている」と報じており、その他のベンダーの生産は2024年以降にズレそうだとしている。もっともそのDigiTimes、4月28日には「TSMCはAMDやMediaTek、NVIDIA、Qualcommなどから3nmの発注確約を受けている」と報じているが、これは恐らくN3Eの事を指すと思われる。
そんな訳でN3は比較的順調に立ち上がると見られているのだが、その一方で4月17日には「TSMCがASMLへの発注を4割カットした(か、納入時期を遅らせた)」という報道がある。
ASMLは言うまでもなくEUV露光機を提供する唯一のベンダーである。もちろんEUVだけでなくDUV(ArFのドライとかArFの液浸)露光機も提供している(し、トランジスタ層や配線層の一部はEUVだが、配線の上層はArFを使っている)から、こちらの発注をカットした可能性もなくはないが、普通に考えればEUV露光機を減らしたということだろう。実を言えばN3とN3Eの最大の違いはDouble Patterningを使うかどうか(N3は最大25層のEUV露光を行い、しかもDouble Patterningを使う。N3Eは19層で、しかもSingle Patterningである)である。そこで可能性としては、N3がAppleのみの発注を考えれば良く、しかも生産量が現状のままで足りているので、追加のEUV露光機を発注しなくても良くなった、あるいはN3Eの需要を考えた所、現状のEUV露光機で間に合いそうなめどが立った、という可能性もある。
実際、こちらの記事の最後でも「現在のチップ在庫調整は、TSMCが3カ月前に予測した水準よりも高く、ことし(2023年)の第3四半期にまで及ぶ可能性があるという。その結果、TSMCは、2023年の売上高がほぼ10年ぶりに減少する可能性があると予測した」とされている。この結果、N3Eの生産能力向上はやや後送りでよいと判断されたのかもしれない。
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