大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
半導体不足に対するルネサスの答え(2/3 ページ)
こちらの記事の最後で出て来た話題(図1を参照)であるが、
同社の工場にある設備は既に20年を経過したものもあり、バスタブ曲線で言えば右側の摩耗期に突入しつつある。これが生産に及ぼす影響を早めに検出するための取り組みの一つとしてe-AIを利用しての製造装置の監視(図2を参照)なども取り組みを始めている。
既に2000点のデータをモニタリング中で、今後4年でこれを4000点に増やすとしているが、根本的なところでこれをやったからといって製造設備の摩耗が戻るわけではない。それもあって執行役員常務兼生産本部長の野崎雅彦氏は装置そのものの置き換えなども進めていく方針を示したが、実はこれ言うのは簡単だが、実際には困難な事情が待ち受けている。
同社の前工程の詳細も発表会では示された(図3を参照)が、ご存じの通り同社は40nm世代までをIn-House、それより先はOutsourceのFab-lite戦略を取っている。そして同社の工場で300mmウェハを扱っているのは、実は那珂工場のみで、それ以外の工場は全て200mmウェハである。この那珂工場も、元をただすとUMCと日立が合弁で立ち上げたトレセンティテクノロジーズの工場だったことを考えると、一部の設備は既に20年近く経過している(トレセンティテクノロジーズは2001年に設立された)訳だが、それでもまあ300mmウェハに関してはまだ製造装置も関連装置も普通に入手できるから問題はない。
問題なのは那珂工場以外である。既に製造装置メーカーは200mmウェハ向けの新規製品の製造をほぼ終了しており、200mmに関しては中古品やリファビッシュ品が流通している格好だが、実はこれも2010年代後半から特に中国で新規のFabが多数立ち上がり、ここがこうした200mmの中古/リファビッシュ品を買い漁った事もあって現在かなり品薄になりつつある。なので、野崎氏の言う置き換えは、那珂工場の設備に関しては比較的容易だが、それ以外の工場では実際には困難が予想される場合もある(全部が全部入手困難、という訳ではないのだが)。
実は主要なFab-lite戦略を取るメーカーはここ数年、こうした状況を見込んで300mmウェハへの移行を進めてきていた。これは先端ロジックだけでなくアナログ半導体でも同じである。例えばON Semiconductorは2019年にGlobalfoundriesのFab 10を買収したが、ここで同社はCMOSロジックに加えてパワー半導体やアナログ半導体を製造する。あるいはInfineonは2021年9月にオーストリアのフィラッハで建設中だった300mmのパワー半導体向け新Fabの操業開始を発表しているのは、もちろんウェハを300mmに大型化することでスループット向上や原価低減が図れることも大きいが、既に200mmウェハの装置が入手できなくなりつつあることも無縁ではない。
こうした背景をかんがみると、この先は工場設備の摩耗期に本格的に入ると予想される那珂以外の工場については、例えばどこかの工場を200mmから300mmに転換し、そこに製造を集中させていくといった戦略は当然あり得る。この結果として空いた工場は売却する(これはたくさん例があるが、例えば旧Maximがテキサス州サンアントニオに拠点を置いていた200mmのFabをTowerJazzに売却したなんてのもその一例だ)のでもいいし、あるいは逆に既存の製造装置を中古市場に放出するという方法もある。もちろんそれぞれの工場拠点の雇用をどう維持していくかという問題はあるが、ルネサス自身これまでもいくつも工場を集約、閉鎖してきた(例えばこれ)訳だから、今更そうした方法をためらう理由はないだろう。
ただルネサスは現実にはそうした方策を取らなかった。先ほどの図3にもあるように、自社の生産能力は微妙に増やしていくし、特に那珂工場の300mmウェハのラインに関してはそれなりに投資を行っていくとはいえ、生産量そのものの増加率は数%のオーダーであって、200mmウェハに関して言えば微増程度でしかない。もちろん先に説明したように、既に200mmの新規製造装置の入手はほぼ不可能であり、中古ですら厳しいという状況では200mmの製造能力を上げるのは無理と思われる。ここまでは別にルネサスに限った話ではない。問題は、300mmの大幅増強とか200mmラインの300mmへの転換(これ、実は言うほど簡単ではない。何しろ200mmと300mmでは製造装置の大きさも変わるし、ウェハ運搬用シャトルも全く別物になる。なので既存の設備を入れ替える程度では実現できないし、工場の建屋も200mmのままでは入りきらない可能性が高い。ほとんどのケースでは転換と言いつつも新規に300mmウェハ用の建屋を新築し、これが稼働してから200mmラインを建物ごと撤去するという形で対応しているのが普通である)などを一切行うつもりがない事だ。
もちろん同社は長期成長の目標として「SAM+」を掲げており(図4)、このために売り上げを増やす(≒それだけ売上個数を増やす)必要はあるが、むしろ同社は売上金額の増加よりも粗利益や営業利益の改善を主眼に置いており、極端に売り上げを目指すつもりはない(それこそDialogの買収などで売上金額そのものは増えるから、ここから+α程度でよい)としており、それがこの製造能力の微増につながっている格好だ。生産能力の増強はTSMCなどのOutsourceを活用する分が大多数で、自社の製造能力を必要以上に引き上げるつもりはないことを雄弁に物語っている。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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