組み込みエンジニアの現場力養成ドリル(24)
英語のコミュニケーションで最も苦労しているのは米国人!? ~ 英語によるUI(2/3 ページ)
解答
問題1の解答
新幹線車内の英語のメッセージが長く、アナウンスのスピードが速すぎる。
問題2の解答
中学生レベルの簡単な単語のみを使い、短いメッセージにして、ゆっくりアナウンスする。
TOEICの真実
ソフトウェアの要求仕様書をデバッグするように、粗探しの視点で上記の問題文を読むと、「???」となる箇所がいくつもあります。「一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会がいきなり出てきたけれど、これって何だ?」「世界150カ国(年間受験者数700万人)の中で、受験者数が500人以上の国って、日本を入れて49カ国しかないの?」と不思議に思った人が多いでしょう。実は、年間の総受験者は、日本と韓国の受験者が、それぞれ3分の1を占め、残りの3分の1が、「148カ国」なのです。
米国の大学が留学生を受け入れる場合、十分な英語力があるかチェックする基準が、有名なTOEFL(トーフル)の点数です。TOEICは、字面がTOEFLによく似ていますが、実は日本生まれで、「一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会」が主催しています。歴史があり、絶大な威力がある英検に対抗し、「英検は勉学用で学生向きだ。会社員がアメリカへ出張したり駐在したりする場合、日常生活で不自由しない実用的な英語力を測定したい」との趣旨でできたのがTOEICです。
TOEICは、立ち上げ時にもめました。既に英検があったため、文部科学省は当初、新しい英語能力検定の設立に難色を示しましたが、なんとか政治力で乗り切り、TOEFLやGREに試験問題を提供している米国のETS(教育試験サービス:Educational Testing Service)に試験問題の提供を発注。1979年に第1回目を実施しましたが、受験生が6000人と少なく、これを憂慮した協会は、2回目の1981年には、同協会の委員の出身母体である富士通や松下電器に協力を仰ぎました。2018年には266万人が受験しており、440倍増。まさに、努力と営業力の勝利です。
日本発の試験をなぜ、世界150カ国で実施しているのかですが、これも営業力が関係しています。世界には、英語力を測る試験として、CEFR、ケンブリッジ英語検定、IELTS、TOEFLなど、いろいろあります。で、海外の教育機関(主に大学)に掛け合い、英語力検定の中にTOEICも追加してもらったのです。
日本で発案、アメリカが作成したTOEICですが、非常に良くできています。もっと、日本が世界に誇っていいと思いますが。
日本人の得点が低いわけ
それにしても、データを見ると、日本人のスコアは下から数えた方が圧倒的に早く、「やっぱり日本人は英語が苦手」と思ってしまいます。このデータには、本コラムの第11回「生還を目指せ、爆撃機の装甲を厚くすべき場所はどこか?」で取り上げた「選択バイアス(selection bias)」が深く関係しています。
選択バイアスとは、「収集したデータが偏っている」ことです。日本の場合、新入社員や新入学生全員に強制的にTOEICを受験させる企業や大学がたくさんあります。ある意味、全員に42.195kmのマラソンを走らせてタイムを計るようなものです。7時間を越える人もいるでしょう。一方、海外では、英語圏の大学への留学目的で受けます。受験者は平均して、大学院在学者か修士取得者で、英語力もモチベーションも高い人たちです。受験料が高価なので、「観光旅行に行くので、一応、英語力を測定しよう」と気軽に受験できる試験ではありません。これは、オリンピックの出場枠をかけた選考会でトップレベルの選手が42.195kmを走るのと同じです。ベストタイムは2時間5分台なんて世界的なランナーもいるでしょう。
日本では一般人も走らされ、海外では最高水準の選手が走るのです。しかも、英語を日常的に使うカナダやインドまで受験しています。これでは、国別の英語力を正しく比較できません。日本は、「選択バイアス」のとばっちりを受けているだけで、国際的に見て英語力はそれほど低くないと私は思っています。
でも、日本人の得点が低いことは、TOEIC関連の「英会話産業」には強い追い風になります。「日本人の英語力は世界レベルに達していない」「国際化しているビジネスでは英語が必須」と言われると、勉強好きで真面目な日本人は一生懸命、英語を勉強しますので、TOEICの関連企業が繁栄します。しかも、国別スコアの発表を開始した2013年から、日本人の得点がじわっと上がっているところも、「英語教育の成果が出ている」と思わせます。
結局、TOEICの得点の国別比較やランキングには大して意味がなく、自分の得点が平均より上か下かが分かる程度です。「選択バイアス」はこれほど恐ろしいのです。では、ユーザーインタフェースとして、どのように英語化したらよいでしょうか?
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組み込みエンジニアの現場力養成ドリル
このコラムでは、組み込みエンジニアが日々の開発で実際に遭遇する「小さなトラブルを」取り上げ、演習形式で解説します。
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