つながる世界の開発指針(3)
IoTの開発現場で考慮すべき「高信頼化機能」とは何か(3/3 ページ)
IoT高信頼化機能の負荷対策
最後に「IoT高信頼化機能を実装した際の性能に及ぼす影響」について紹介する。「IoT高信頼化機能を実装したら、負荷がかかりすぎてシステムが正常に動作しなくなった」という事態は避けたいところだ。ここでは、「予兆の把握による負荷」「改修による負荷」「ログ集約・予兆の性能」の3つを考えてみたい。
1 予兆の把握による負荷
大量のログ収集やウイルスチェック、定期診断はシステムに大きな負荷がかかる。利用時間の少ない時間帯に実行するなど、あらかじめスケジュールを設定できる機能や、実行優先度を下げて実行するプライオリティ制御などの対策を講じる必要がある。
2 改修による負荷
リモートアップデートを実施する場合は、対象機器に負荷がかかる。こちらも上記と同様に、本来機能の遂行への影響を低減する対策が必要である。また、使用するネットワークの負荷が増加することに配慮した配信方法の検討も必要だ。具体的には、配信サーバ側では、対象となるデバイス数を管理し、ネットワークが過負荷にならないように一度に配信する個数を制限するなどの方法が考えられる。
3 ログ集約・予兆の性能
センサーなど、低リソースのIoT機器は、機器自身でログ分析を実行できないため、ゲートウェイサーバなどの集約装置にログを集約し、障害の予兆を目的としたログ分析を実施する方法がある。集約装置では、予兆対象機器の個数や取得するログの量などを規定して1回に分析する個数を制限し、分割して予兆分析ができるように工夫したい。
実証実験:スマート工場におけるIoT高信頼化
今回紹介した「異常の検知」に関してIPA/SECでは、中小製造業でのスマート工場を想定した実証実験を実施している。ここでその内容をかいつまんで紹介したい。
この実証実験では、産業ロボットシステムとエネルギーマネジメントシステムを連携し、各システムから得られる生産稼働情報と電力情報を組み合わせて分析することで、産業ロボットの故障に至る軽微な異常を早期に検知できることを示している。
具体的には、製造ラインのロボット・機器を制御する産業ロボットシステムと、工場内の照明、空調といった機器を管理するエネルギーマネジメントシステムを連携し、生産監視システムで一元的に制御する分野間連携システムを想定した(図3)。そのうえで、異常の波及防止や指示の競合検知などの対策を実装し、その有効性を確認した。
実験手順
- 1 産業ロボットなどの製造機器に電力センサーを取り付け、エネルギーマネジメントシステムで電力情報を収集する。
- 2 2製造ラインにある産業ロボットシステムから生産稼働情報を収集する。
- 3 生産監視システムで電力情報と生産稼働情報を集計し、1加工サイクルあたりの電力量を算出して「正常時の正解値」を割り出す。
- 4 産業ロボットシステムが稼働している状況において、1加工サイクルあたりの電力量を測定し、正解値と比較することで異常を検出する。
実験から確認できたこと
- (1) 異なる2つの情報を組み合わせた監視機能の実現性
産業ロボットシステムの生産稼働情報とエネルギーマネジメントシステムの電力情報から、1加工サイクルあたりの電力量を算出してその変化を監視し、過電流や漏電などの異常の兆候を示す状態を検知できることを確認した。(また、1加工サイクルの動作時間を測定し、動作基準時間として差分チェックすることで、悪意があるソフトウェアの改ざんなどによる製造機器の動作速度の異常を検知できることを確認した。)
- (2) 制御指示の矛盾検出と波及防止機能の実現性
産業ロボットシステムの温度センサーで製造機器周辺の温度が高温になったことを検知し、空調をパワーオンする指示が出ることを想定し、同時にエネルギーマネジメントシステムでは、工場全体の電力消費量が上限を越えそうな状況を検知して、空調のパワーオフを指示したことを想定した実験を実施した。この場合、空調に対するパワーオンとパワーオフの矛盾した指示を一定時間のオン・オフの繰り返し回数を監視することで、制御指示の異常を検知し、警告できることを確認した。
なお、詳細はIPAのWebサイトに掲載(IoT時代に求められる異分野間連携の実現を実証実験で確認~監視情報を連携させることによって高信頼化が可能に~)している。ぜひ参考にしてほしい。
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「つながる世界の安心安全」実現に向けた重要ポイント
IoT(Internet of Things)は、新規ビジネスの創生や利便性の向上による市場獲得などが期待されている一方で「つながる」ことで発生するセキュリティ脅威の増大や、“1つのモノ”の障害が、ほかのモノに波及/拡大する危険性も懸念されている。 こうした現状を鑑み、情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(IPA/SEC)では、IoT機器/システムの開発者や経営者に検討してほしい事項を「つながる世界の開発指針」や「『つながる世界の開発指針』の実戦に向けた手引き」としてまとめた。本連載ではこれら内容をより具体的に紹介していく。
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