PTC Forum Japan 2017|ヒロテック 講演レポート
製造業が変わらなければならない「理由」とスマート工場の実現に必要な「視点」(2/2 ページ)
スマート工場の実現を支える「統合プラットフォーム」の強み
では、どのようにしてスマート工場の実現を目指していくべきか。へスター氏は、その実現を支える“統合プラットフォーム”の重要性について、次のように説明する。「スマート工場の実現を考える際、いろいろなシステムをつなぎ、組み合わせることを考えがちだが、1つの統合プラットフォームを導入することで迅速な立ち上げを目指すべきだ。どうやって個別のシステムを連携させるかといった余計なところに時間を使う必要はない」(へスター氏)
ヒロテックでは、IoTプラットフォームにPTCの「ThingWorx」を採用している。設備機器からの情報を同じくPTCの「KEPServerEX」で一元的に吸い上げて、HPEのエッジコンピュータに蓄積し、サーバ上で稼働するThingWorxプラットフォームに取り込む。「ThingWorx Analytics」で分析した結果を踏まえて可視化を行ったり、「ThingWorx Studio」によるAR活用を実現したりしている。「これらを容易に実現できるのが統合プラットフォームの強みであり、技術そのものを導入することに時間を割くのではなく、製造現場におけるIoTやARの効果を見極めて、それを最大化させる部分に注力できる」とへスター氏は説明する。
ヒロテックが最初にThingWorxを導入したのは、同社の米国拠点であるHirotec America(ヒロテックアメリカ)である。ヒロテックアメリカには1980年代に設置されたものから2014年に設置されたものまで合計8台のCNCマシンがあり、これら機器の稼働状況をリアルタイムで収集して可視化することに成功した。
その後、日本のヒロテックでも2016年にThingWorxを導入。2017年からは自動車用ドア製品の生産ラインで活用され、稼働状況の見える化や分析結果の可視化を実現している。「生産ラインのさまざまな設備機器からのデータを、KEPServerEXで吸い上げて、ThingWorxに取り込んでいる。ドア製造ラインの約7000ものデータポイントから0.5秒ごとにデータを収集している。こうしたデータをThingWorxに入れて、Analyticsで分析を行うことで、将来の改善につながる価値あるデータを導き出すことができる」とへスター氏。ヒロテックでは、設備機器のリアルタイムな稼働状況の見える化を実現し、設備の総合効率やドアの生産数、エラー発生件数、ラインの稼働状況などをダッシュボード上で閲覧できるようにしている。
また、へスター氏は「スマート工場で重要なのは単に可視化するだけではなく、重要な情報を的確に示し、そのステータスなどに応じて迅速に“次の行動”につなげることだ」と述べ、設備機器などに異常が発生した際、ダッシュボード上に表示されている稼働状況などがいったん消えて、緊急性の高い情報だけをハイライト表示する機能を紹介。「自動車製造業では、1分間のダウンタイムで250万円の損失が発生する。そのため、対応の遅れをなくし、ダウンタイムを最小化しなければならない。緊急対応が必要な情報だけを表示し、エラーの種類、発生機器、発生時間、該当機器の設置場所をビジュアルで表示することで問題箇所を正確に把握し、迅速な対処ができる仕組みを提供している」(へスター氏)。さらにヒロテックでは、製造品のライフサイクルレポートにも対応。ドアにシリアル番号が割り当てられており、製造開始日や完成日、各プロセスに要した時間といった細かな情報まで管理され、トレーサビリティーを実現している。
そして現在、必要な時に、必要な人に、必要な場所に価値ある情報を提供するという観点から、ウェアラブル技術の活用も進めているという。ARソリューションのThingWorx Studioとスマートグラスを融合させて、設備機器のリアルタイムの稼働状況や異常発生時の対処方法のガイダンス表示などを、AR技術を使って実現している。なお、ヒロテックが参加する「ひろしま生産技術の会」では、この取り組みに関するデモンストレーションを「2017国際ロボット展(iREX 2017)」(会期:2017年11月29日~12月2日)で披露していた。詳しくは、そのデモンストレーションの模様をまとめた記事「広島発、24時間365日無人稼働のスマート工場――IoT/AR基盤に『ThingWorx』」をご覧いただきたい。
スマート工場の取り組みは「ローカルからグローバルへ」
このようにIoTやARを活用したスマート工場の実現に取り組むヒロテックだが、講演の最後、へスター氏はスマート工場を実現する上で忘れてはならない2つのポイントを紹介した。
1つ目は「人」である。「解決したい課題を前にすると、IoTやAR、AIといったテクノロジーの部分に着目しがちだが、そこから一歩引いて、そこで成果を生み出すチームや人のことをまず考えるべきだ。作業員にとって何が成果であり、何を解決することがパフォーマンス向上につながるのか。そういう視点から入ることで、テクノロジーの導入効果を最大化でき、人や組織に対して価値を提供できるスマート工場が実現できるはずだ」とへスター氏は語る。
2つ目は「ローカルからグローバルへ」だ。「スマート工場を考える際、グローバル企業であれば、いきなりグローバルスタンダードを思考しがちだが、そうではなくまずはローカルに注目すべきである。工場ごとにローカルルールは存在するものだ。そういうところに対して、いきなりグローバルスタンダードを押し付けてもうまく立ち上がらない。将来的なグローバル展開も視野に入れつつ、ローカルの工場の中で、小さなレベルからプロジェクトをスタートし、小さな成功を生み出すことを目指す。そして、その積み重ねた成功をローカル全体で展開できるようになってから、初めてグローバルへ本格展開すべきだ」(へスター氏)
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