APTJ Julinar SPF
「日本から国際標準を」“自動車大国”の競争力を組み込みソフトで支えるベンチャー
日本が世界に誇る自動車産業。車載ソフトウェアの標準仕様に準拠する「Julinar SPF」を販売する大学発のベンチャーは「日本から国際標準技術を」と意気込む。
APTJは2017年11月15日、AUTOSAR準拠の車載制御システム向けソフトウェアプラットフォーム(SPF)「Julinar SPF」を先行販売すると発表した。販売は6社のパートナー企業から行われる予定で、その内の1社、富士ソフトからは同日付での販売開始が発表されている。
APTJの高田広章氏(代表取締役会長 最高技術責任者)は「日本から国際標準技術を」と意気込む。
AUTOSARは車載ソフトウェアの共通化を目指して2003年に設立された団体。「標準化で協調し、実装で競争する」をポリシーに、車載ソフトウェア/アプリケーションとマイコン(ハードウェア)を切り離した仕様の提案と策定を進めている。2017年現在のコアパートナーはトヨタ自動車、BMW、ダイムラー、フォード、プジョー、GM、フォルクスワーゲン、ボッシュ、コンチネンタルの9社だ。
これまで日本国内においてはメーカーごとの独自開発が主流であり、共通化を目的とするAUTOSARはあまり受け入れられなかった、機能安全への対応やマルチコアマイコンによるECU統合、ADASの普及など、開発工程が増大するなかで、開発負荷軽減を実現するAUTOSARへの注目は高まっている。
AUTOSARの定める仕様のなかでSPF(電子プラットフォームとも呼ばれる)は、いわばOSとミドルウェアに相当するソフトウェア基盤であり、RTE(Run Time Environment)とBSW(Basic SoftWare)、それにアプリケーションという3層で構成される。AUTOSARコアパトナーが欧州に多いこともあり、Vectorや(Siemensに買収された)Mentor Graphics、Elektrobit、KPITといった欧州拠点の企業がAUTOSAR準拠のSPFを扱っている。
日本国内においてもATPJを始めSCSK、オーバスといった企業がAUTOSAR準拠SPFの開発を手掛けているが、「国内企業が頑張らないと、車載制御システム(向けSPF)が海外企業に独占されてしまう」と高田氏は懸念を表する。
「OSやプラットフォームは寡占が進みやすく、AUTOSARについては欧米に加えて日本でも採用増が予測できる。ソフトウェア基盤を海外製に抑えられてしまうと、日本の自動車産業にも影響が生じるのではないか」(高田氏)
名古屋大学発のベンチャー企業であるAPTJは、大学における研究活動だけでは車載制御システム向けSPFが海外製だけになってしまうことを懸念した高田氏が2015年10月に立ち上げた。AUTOSAR SPFの研究開発を主とするが、開発については豊田自動織機やジェイテクト、販売については富士ソフトやサニー技研などといったパートナー企業との連携を前提としており、「コンソーシアム型ベンチャー企業」を名乗る。
「Julinar SPF」の正式リリースは2018年9月が予定されているが、導入支援やポーティング、それにカスタマイズも欠かせないことから、導入を検討する企業が必要とする基本モジュールを部分的に「先行販売」というカタチで2017年11月から提供する。販売形態や価格はパートナー企業にある程度任されており、APTJはそれらパートナー企業へのサポートを行う。
Julinar SPFはAUTOSAR仕様に準じる(R4.2.2およびR4.3.x)製品であるため、「仕様準拠製品」であるだけでは海外勢との差別化にならない。高田氏は「既存モジュールを組み合わせただけではない、仕様に忠実な自社設計製品」であることを強みに挙げ、同時に、TOPPERSプロジェクトと名古屋大学における開発経験やパートナー企業との共同開発なども強みとして挙げる。なお、パートナー企業との強固な関係構築もあり、2019年にはJulinar SPFを利用した車両が登場する見込みだ。
高田氏はATPJの今後のビジョンについて、2018年9月までを「海外勢と競争できるだけの力を蓄える第一フェーズ」、2018年10月以降を「日本から国際標準技術を発信できる第二フェーズ」と位置付け、“自動車大国”ニッポンの競争力を組み込みソフトウェアから支えていきたいとした。
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企業戦略(自動車)
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