IARのCEO解任に見る業界再編/FD-SOIの今後:大原雄介のエレ・組み込みプレイバック(4/4 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、2021年10月の動向から「IARのCEO解任」と「FD-SOIの今後」についてお届けする。
同社の28FDSプロセスは、例えばNXPのi.MX7 ULPとかLatticeのNexusシリーズの様な低消費電力向け製品に使われており、この意味ではGlobalfoundriesの22FDXよりも間違いなく成功したと考えてよく、また同社の28FDSに向けてArmは2018年にMRAMコンパイラを提供開始、2019年には次世代ノードである18FDS向けMRAMコンパイラの提供やPOP IPの提供を発表したが、その18FDSに関してはもう御覧の通りSamsungのロードマップから消え失せてしまった。現状、まだSamsung Foundryの300mm Technologyのページには18FDSの名前が残っているが、逆に図3に出てくる17LPVとか、新たな14nm/3.3Vのプロセスがまだ入っていないあたりは古い情報と考えるべきで、おそらく来年あたりまでにこれも刷新されると考えてよいだろう。
こうしてみると、やはりFD-SOIは仇花で終わったというべきか。Body Biasを行うことで省電力/高性能の両方に特性を振りやすいとか、RFあるいはHigh Voltageの構成を作りやすい、耐放射線対策をしやすい、MRAMなどを構築しやすいなどいくつかのメリットはあったものの、どうしてもSOIウェハに起因するコストの壁を破ることはできなかったということだろうか。
ただこの方向性は、Globalfoundriesの長期的なビジネスの展望にも影を落とさざるを得ない。7nmプロセスの開発を無期限延期した際には、14/12nm FinFETとFD-SOIに特化していく方向を示したが、皮肉なことにEUV露光が急速に進化したことにより、もう何年かすると7nm前後のプロセスがMatureになりつつあると思われるからだ。現状7nmのコストが高くつくのは、ArF+液浸によるマルチパターニングが必須になる関係で、マスクコストや生産コストが跳ね上がるのが一因である。ところがEUVによるシングルパターニングなら、マスク枚数も大幅に減るし、シングルパターニングなら後工程の数そのものも大幅に減るためで、長期的には現在の16〜12nmプロセスと同程度のコストまで下がりそうである。
まだEUVステッパーのコスト償却前だから、7nmのEUVプロセスのコストは高止まりしているが、5年後あたりはこちらが16〜12nmに代わって主力になりかねない。その時Globalfoundriesは、何で勝負するつもりなのだろうか? 残念ながらIPOに伴って公開されたプレゼンテーションやSEC向けドキュメントを見る限り、この答えは書かれていなかった。
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