宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(65)
ネットにつながらない自動車にもサイバー攻撃、安全をどう作り出す?(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届け! 今回は、CANインベーダーを使った自動車窃盗の“問題の深さ”をお伝えします。
2021年9月、兵庫や大阪で高級車を盗んでいた窃盗グループが逮捕されたという報道がありました。
自動車を奪われること自体は、日常茶飯事のように起きてしまっているのが実情です。それでもこの報道で注目すべき点は、「CANインベーダー」と呼ばれる手法を使っていたグループを全国で初めて摘発した点にあります。
「CANインベーダー」は、自動車の制御システムをハッキングするという手法です。これまでも実証レベルでのハッキングは想定されていたものの、この手口が犯罪者の中ではもはや一般的になりつつあることを知らしめる、ターニングポイントになったのではないでしょうか。
CANインベーダーを使った自動車窃盗で私たちも考えねばならないこと
自動車の内部を巡る車載ネットワーク「CAN」そのものについては、ぜひMONOistの下記記事などをご参照ください。
今回のポイントは、自動車の内部ネットワークに外部から無理やり侵入し、その通信内容を盗聴したり、不正な通信を送り込んだりできてしまうことが大きな問題になりました。これまで自動車に対するハッキングは、車内に入り込みボードに直接アクセスしなければ成立しないと私も思っていましたが、CANインベーダーによる自動車窃盗事例はドアのキーロックを開けることなく、バンパーの裏からアクセスすることができてしまうことにより、内部ネットワークに侵入できてしまうと報じられています。
“攻撃者”の視点で考えれば、攻撃が成立し自動車のコントロール権を奪えてしまえば、ある程度容易にそれを金銭化できてしまいます。これはかなりコストパフォーマンスのよい“仕事”であるともいえるでしょう。防御側、特に自動車のオーナーはなすすべがなく、上記記事では本当に守るための手法はもはや物理的なハンドルロックやタイヤロックしかないということになります。
では、いったい誰が根本的な防御方法を施すことができるのでしょうか。これは、ベンダーである皆さんしかできないことなのではないかと思っています。
IT業界も同様の苦しみ、「外」と「中」を分ける防御手法の終焉
この手法を聞いたとき、まさにいまIT業界がさらされているセキュリティのパラダイムシフトにそっくりだと思いました。それは強固な壁を作り、その外と中とを区切ることで安全を確保するという、これまで採られてきた手法のことです。「境界防御」と呼ばれるそれは、ファイアウォールなどを作り、外からの通信を遮断しオフィスなど内側は安全である、とするものです。
ところが、もはやこの手法は崩壊しつつあります。テレワークが必要となったことで外からも内側に入らねばならない事態になったこと、そしてクラウドなど、そもそも内側に存在しないサービスを使う必要があり、もはや内、外の区別では守れない時代に突入しました。
車載ネットワークも同様でしょう。これまでは外部からのアクセスを一切考えなくて良かったため、そもそも攻撃が来るということを想定していなかったはずです。特に製造業であることを考えると、重要視すべきはサイバー攻撃よりも安定性や反応速度だったはずです。ところが、前提が変わってきてしまいました。外部からのアクセスが実際に発生していることで、これまで作ってきた境界が侵害され、その先には何も防御手法がないという状態です。これが、今回のCANインベーダーによる窃盗につながってしまいました。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
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