RTOSとLinuxを同時に使う理由とそれぞれの課題:RTOS/Linux共存の最前線(1)(3/3 ページ)
組み込み機器に求められる要件は高度化/複雑化しており、チップ側もマルチやヘテロジニアス構成が一般化している。そうした環境下で注目されるのが、「RTOSとLinuxの共存」である。本連載では共存環境の開発に向けた注意点を紹介していく。
Linux/RTOS共存のニーズとメリット
これまで述べてきたようにRTOSとLinuxでは得意分野が違う上、昨今の組み込みシステムの要件複雑化と組み込みチップの高機能化/複雑化に伴い、「1つのチップ内で役割を分割し、LinuxとRTOSを共存させそれぞれの強みを生かす」という方向性が浮上しています。
しかしながらその一方、現状ではヘテロジニアスマルチコアを採用した製品(チップ)を実装していても有効な利用方法が分からないため、「Cortex-AコアはLinuxで使用しているが、Cortex-Mコアは利用方法何も利用されずに遊んでいる」といったケースも見受けられます。
そのため、リアルタイム性と汎用性の共存するシステムに向けたヘテロジニアスチップが増え、コアの特性に合わせたOS選定や、共存方法自体の選定が求められるようになってくると考えられます。次回は実際の組み込み製品にフォーカスして、Linux/RTOS共存の最新動向を紹介します。
イー・フォースとサイバートラストの協業について
イー・フォースは創業10年を迎えたRTOSベンダーであり、μITRON規格に準拠したOSをCortex-A、Cortex-Mに国内でいち早く提供しています。また、2017年からuC3+Linuxを発表しLinuxとRTOS(uC3)のマルチOS環境の共存を支援するパッケージを提供しています。
またサイバートラスト(旧ミラクル・リナックス)は2000年に設立された国産ディストリビューション「MIRACLE LINUX」の開発元として、近年ではエンタープライズ向けのLinuxの提供や組み込みLinuxなどに力をいれています。
今回、両社がお互いの技術を協力していくことにより、複雑化する組み込みシステムのソリューションの1つとしてマルチOS環境の普及を担っていきたいと考えています。
・プレスリリース:サイバートラストとイー・フォースが組込み開発分野で協業
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