第4次産業革命の本質(自律化の意味):製造業のIoTスペシャリストを目指そう(9)(1/2 ページ)
製造業の革新というテーマでは「第4次産業革命」という言葉が頻出します。この最新の産業革命が進む中、製造業が競争力を高めるためには、何に留意していくべきかを考えます。
はじめに
IoT(Internet of Things)時代においては、第4次産業革命というキーワードで、これからの産業の在り方や業務の実施方法が語られることが多いと思います。この第4次産業革命とは何でしょうか?今回は、この第4次産業革命について考えてみたいと思います。
第4次産業革命とは?
まず、第1次から第3次までの「産業革命」を簡単に確認しましょう。第1次産業革命は蒸気機関という動力を得た事によるによる「機械化」の始まり、第2次産業革命はより高い出力である電力を得た事による「大量生産」の実現、第3次産業革命はコンピュータによる「自動化」であると言われます。
これが第1次から第3次までの産業革命について、簡略な説明になるかと思います。これらの段階を経て、人手に頼っていた産業(製造)が自動化/ロボット化され、効率化と省人化が進められてきました。
なお、ドイツでは第4次産業革命と似た概念の「Industrie 4.0」(英語では「Industry 4.0」)という国家施策が推進されています。これは、製造業の「デジタル化」「コンピュータ化」を進める(サイバーフィジカルシステム化)ことで、国全体を1つの工場とする施策といえます。
話を戻します。第4次産業革命においては、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」「RPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化/自律化)」という3つのキーワードが要注目となります。この3つを認識すること、特に最後の「自律化」が重要なポイントになります。
自律化(autonomous)とは?
それでは、自律化(autonomous)とは何でしょうか? 「自律」という用語は、この連載「製造業のIoTスペシャリストを目指そう」でも何度か登場しています。
第5回「ものづくりへのロボット適用とその進化」では、産業用ロボットの進化において、その最終段階で目指す姿として「自律」という言葉が搭乗します。第8回「IoT時代の製造業における、つながるの意味」では、問題文の中に「AI(人工知能)により形式知化(知能化)され、未来への技能伝承や自律化につながる」という記載があります。また、第4回 「製造業へのAI(人工知能)適用で知っておくべき事」でも、この「自律化」の概念を説明しています。このように、製造業IoTにおいて「自律」は大きな意味を持ちます。
この「自律化」の概念は、第3次産業革命のキーワードである「自動化」と比較し、説明した方が分かりやすいと思います。
従来の「自動化」は人が論理を検討し、プログラミングすることでルール(条件)を設定していました。つまり、意思をもって動いているように見えても、動作の判定倫理は人が考え、その論理通りに動くのが「自動化」です。一方、「自律化」においては、目的を設定することで、AI(人工知能)/ロボット自らがデータを学習し、その目的を達成するために最適なルール(条件)を設定します。データが更新されれば、このルールも変わります。
IoTの4段階
「バリューチェーン」や「ファイブフォース」などの考えを世に出し、競争戦略の父といわれているマイケル・ポーター氏はIoTに関する数々の論文も発表しています。このポーター氏はIoTに関して、「モニタリング(見える化)」「制御(コントロール)」「最適化」「自律化」の4ステップを追わなくてはならないとしています。
この第4次産業革命の「自律化」が進むと、「運転士や機械や設備のオペレーターといった仕事が無くなり、AIやロボットが取って代わる」という論があります。事態がそこまで進むかはまだ分かりませんが、さまざまな自律化が浸透すれば、仕事のやり方や内容が変わることは確かでしょう。
製造業においては(製造業に限らない話ですが)いち早くこの第4次産業革命の流れを理解し、AIやロボットでは実施が困難な、付加価値の高い業務にシフトしていかないと競合力を失うことになりかねません。
今回の問題
それでは、IoT関連の知識・スキルアップに役立つ問題を出題します。今回は、上記の第4次産業革命のキーとなる「自律化」についての問題となります。
問題(9)
第4次産業革命においては、「自動化」とは異なる「自律化(autonomous)」という考え方の理解が非常に重要になります。次の改善事例において、「自律化(autonomous)」の内容として最もあてはまらないものを1つ選びなさい。
- 文字認識を実施するため、人が文字の形の判定論理を構築しプログラミングすることで、数字やアルファベットの認識を行う
- Googleは大量の猫の画像を、ディープラーニング(深層学習)を利用して学習させることで、猫の画像を高度な精度で認識できるようになった
- 製品画像に従来の熟練の担当者が合格/不合格を教える(ラベル付け)教師有り学習を実施することで、製品にゴミやキズが無いかの外観検査を、熟練の担当者とほぼ同じ精度かつ高速に行えるようになった。
- 自動運転で難しいといわれる悪路(ダートや雪道など)での走行を繰り返し実施することで、スムーズにかつ乗客に不快感を与えない走行を学習した
※本連載の設問が実際のIoT検定にそのまま出題されるわけではありません。
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