コスト低減のカギはIoT、自己診断する1500V級パワコン:シュナイダー エレクトリック Conext SmartGen
シュナイダーエレクトリックが「スマートエネルギーWeek 2017」にて国内初投入となる太陽光発電向けの新製品を披露した。自己診断機能を備えるパワコンなど、IoTを強みにコスト低減や安定稼働ニーズが高まる国内市場を開拓していく方針だ。
仏重電大手の日本法人、シュナイダーエレクトリックは「スマートエネルギーWeek 2017」(2017年3月1〜3日、東京ビッグサイト)内の「第7回 国際スマートグリッド EXPO」に出展し、国内初投入となる太陽光発電向けの新製品群を披露した。
展示した新製品の1つが、小型のパワーコンディショナー「Conext CL-60」だ。出力66kW(キロワット)で、重量は58kg、変換効率は98.8%。2MW(メガワット)程度までの分散設置太陽光発電所向けの製品だ。国内の太陽光発電所でも広がっているパワーコンディショナーの分散設置ニーズをターゲットとする。2017年中の販売を予定している。
もう1つの新製品が、太陽光発電用のパワーコンディショナーと蓄電池の充放電システムの昨日を一体化した「Conext XW+」だ。国内も太陽光発電に蓄電池を併設する事例が増え始めている。夜間に日中に充電した余剰電力を売電することで、トータルでより多くの売電収入を得られるといったメリットがある。
Conext XW+はこうした太陽光発電への蓄電池の導入拡大を見据えた製品で、住宅やオフィスで使用される単相と、工場やビルで利用される三相の2種類の電力系統に7.0〜102kWまでの範囲で対応できる点を特徴としている。
2017年3月1日から販売を開始しており、既に国内での導入実績もある。鹿児島県で同年1月31日から売電を開始した出力122.4kWの蓄電池併設型の太陽光発電所「EIWAT SOLAR STORAGE I」にConext XW+を9台導入した。米国製の蓄電池を合計252KWh(キロワット時)併設している発電所で、MPPT(最大電力点追従機能)も24台導入した事例だ。
もう1つの新製品が直流入力電圧1500Vに対応する、定格出力2MWの太陽光発電向けパワーコンディショナー「Conext SmartGen」だ。2台をコンテナに格納し、その中に特別高圧機器、変圧器も併設した形で提供する。各機器の配線を事前に準備した状態で提供する仕組みだ。2018年中の納入を目指すとしている。また、製品保証も30年と長期なのが特徴だ。
改正FIT法の施行や「固定買取価格制度」による買い取り価格の引き下げなど、転機を迎えている国内の太陽光発電市場。Schneider Electricのソーラーおよびエネルギーストレージ事業部門担当バイスプレジデントを務めるArnaud Cantin氏は「日本の太陽光発電事業者や投資家には大きなプレッシャーがかかっている状況にあるといえるだろう。既に建設した発電所を効率よく稼働させるのと同時に、安定的な運用に必要なメンテナンスコストを低減していく必要もある」と述べる。
また、シュナイダーエレクトリックのソーラー部門で日本・北アジア責任者であるDaniel Chua氏は「短期的な視点で発電所の建設に必要なコストを削減しても、長期的にはROI(投資収益率)が下がる可能性も高い。太陽光発電所は20年、30年後も利用していくという長期の視点が非常に重要だ」と語る。
その中で同社が投入する製品群の大きな強みとするのがIoTの活用だ。例えばConext SmartGenは、運転状況やメンテナンスの履歴をクラウド上に保存し、自己診断を行う機能を備える。メンテナンス警告や故障報告を自動で送信する仕組みだ。「これにより必要な時だけメンテナンスを行うといった予知保全が可能になるため、運用コストを大きく削減することができる」(Cartin氏)
Conext SmartGenでは、1500V化による送電効率の向上、パワーコンディショナーの大容量化による設置台数の削減が寄与する建設コストの削減、さらにはIoTを活用した長期的な運用コストの削減という3つのメリットを武器に太陽光発電市場の開拓を狙う方針だ。こうしたコスト低減への貢献を強みに、既に日本より太陽光発電の売電単価が低い海外地域への導入実績も広がっているという。
シュナイダーエレクトリックで日本の太陽光発電市場に2013年6月から本格参入して以降、これまでに合計400MW以上への製品導入の実績がある。これまでは主にパッケージ型変電所「PV-BOX」を中心に展開してきた。2017年からは新製品の投入を機に、太陽光発電所に加えて、今後拡大していくとみられるマイクログリッドもターゲットに市場開拓を進めていく方針だ。
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