Cypress、低消費でより強固なセキュリティ実現:Cypress PSoC 6
Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)は、IoT機器に向けたマイクロコントローラー(MCU)アーキテクチャ「PSoC 6」を発表した。デュアルCPUコア構成とし処理性能を向上しつつ、消費電力を抑えた。セキュリティ機能もハードウェアベースで実装した。
デュアルCPUコア構成、HWでセキュリティ機能を内蔵
Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)は2017年3月13日、IoT機器に向けたマイクロコントローラー(MCU)アーキテクチャ「PSoC 6」を発表した。デュアルCPUコアの構成とすることで、処理性能を向上しつつ消費電力を抑えた。セキュリティ機能もハードウェアベースで実装している。
PSoC(プログラマブルSoC)は、CPUコアやメモリの他、ユーザーモジュールと呼ばれるアナログやデジタルブロックを集積している。静電容量センシング技術「CapSense」などを搭載しているもの特長の1つだ。
新たに発表した「PSoC 6」は、これらの特長を継承しながら、IoT機器で求められる機能/性能を新たに盛り込んだ。その1つがデュアルコアアーキテクチャの採用である。「ARM Cortex-M4」および「Cortex-M0+」と、2種類のCPUコアを内蔵している。
システムコントロールなど比較的高い演算能力を求められる処理をCortex-M4が主に担当し、スタンバイモード時の処理や通信制御などをCortex-M0+で実行することができる。処理負荷に応じて演算を分担することにより、MCUとしての処理性能と消費電力の最適化を実現した。プロセス技術はこれまで用いてきた130nm技術ではなく、独自のウルトラローパワー40nmSONOS技術を新たに採用した。
新開発のプロセス技術を用いることで、極めて小さいアクティブ電力を実現した。Cortex-M4コアで22μA/MHz、Cortex-M0+コアは15μA/MHzである。また、動的電圧周波数スケジューリング(DVFS:Dynamic Voltage and Frequency Scaling)機能を搭載した。ローパワー(LP)モード時の動作電圧は1.1V、ウルトラローパワー(ULP)モード時の動作電圧は0.9Vとなる。
この結果、Cortex-M4コアの場合、LPモードで150MHz動作時の消費電流は6.0mAとなる。ULPモードで50MHz動作時は1.5mAである。同様にCortex-M0+コアだと、LPモードで100MHz動作時に消費電流は2.5mA、ULPモードで25MHz動作時の消費電流はわずか0.5mAと小さい。これ以外にも、クロックを8MHzに下げる低電力アクティブモードや、CPUコアの動作を停止し周辺ブロックのみ動作状態となるディープスリープモードなどを用意している。
ネット経由のソフトウェア書き換えも楽に
IoT機器では、インターネットを介してソフトウェアの書き換えも容易となる。このため、より強固なセキュリティ機能が求められる。PSoC 6は、セキュアブート機能に加えて、ファームウェアやアプリケーションソフトウェア、暗号キーなどを保護するためのセキュアデータストレージ機能を備えた、ハードウェアベースのTEE(Trusted Execution Environment)を内蔵した。
また、楕円曲線暗号(ECC)やAES(Advanced Encryption Standard)、セキュアハッシュアルゴリズム(SHA-1/2/3)などの暗号化アルゴリズムをハードウェアコプロセッサとして実装した。これによって、外部のメモリやセキュアエレメントを用いることなく、複数のセキュア環境を同時にサポートすることが可能となる。
PSoC 6は、標準仕様品(PSoC 62パフォーマンスファミリー)に加えて、Bluetooth Low Energy(BLE)5.0に対応したワイヤレス接続オプション(PSoC 63コネクティビティファミリー)も用意している。PSoC 6のICチップ、開発キットおよび、ソフトウェアはすでに、特定顧客向けにサンプル出荷を始めた。量産は2017年第4四半期(10〜12月)初旬にも始める計画である。「PSoC 6 BLE Pioneer Kit(CY8CKIT-062-BLE)」の価格は75米ドルとなっている。2.7型E-inkディスプレイモジュールは20米ドルである。
ブランドロゴも刷新
サイプレス セミコンダクタは2016年8月、Hassane El-Khoury氏が社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した。日本サイプレスの社長を務める長谷川夕也氏は、「新体制となり、経営ビジョンを『Cypress 3.0』に変更した。世界的には車載、IoT、インダストリアルの3分野を中心に、顧客に近いところでシステムソリューションを提案していく」と話す。経営ビジョンの変更に伴い、ブランドのロゴも刷新した。
特に、IoT機器はハッキングやウイルスへの対策がこれまで以上に要求される。「日本市場では、セキュリティ機能や無線機能とプログラマブルな機能を併せ持つPSoC 6製品の提案を、IoT市場に対して強力に推し進めていく」計画である。もちろん、ハードウェアでセキュリティ機能を搭載していることから、自動運転システムなどのハッキング対策にも有用だとしており、車載システムへの展開も行っていく方針である。
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