センサーネットワークは社会インフラ化する:アナリストオピニオン
近年、注目されるICTテクノロジーに「IoT(Internet of Things)」がある。IoTとは、モノ/ヒト/コトに関する情報を収集し、その情報をインターネット/専用線などを介してクラウドに集め、データ解析することで新たな価値を生み出す仕組みだ。
IoTとセンサーネットワーク
近年、注目されるICTテクノロジーにIoT(Internet of Things)がある。
IoTとは、“モノ/ヒト/コト”に関する情報を収集し、その情報をインターネット/専用線などを介してクラウドに集めてビッグデータ化。このデータを解析することで、新たな価値を生み出す仕組みである。そしてIoTで生み出す価値としては、「見える化、リアルタイム化、最適化、意思決定支援、自動認識・自動制御、遠隔監視、測位、予知・予測・予防、(不動産などでの)価値向上、モデル創出/新規ビジネスの創出」などが挙げられる。
IoTでは末端デバイスとして、センサーネットワークシステムを始め、家電やPC、スマートフォン、タブレット端末、人(SNSなど)、オフィス機器、その他(体重計や家具、車両など)も包含しており、インターネット接続環境にある全てのモノが対象となる。
このようにIoTは、センサーネットワークの上位概念に位置する仕組みであり、センサーネットワークはIoTを実現する上での要素技術の1つである。
IoTが進展した背景にはさまざまなIT技術の向上があるが、センサーネットワーク技術の進展も大きな役割を担っている。そしてIoTの普及に伴い、ますますセンサーネットワークの適用拡大が期待されている。
例えば、モノづくりの現場(工場など)や産業機械、設備の運営・保守においては、センサーネットワークをベースとした情報収集機能の強化により、従来よりも効率的・実効性の高い仕組みが期待される。さらには、予防保全・故障予知といったより高度なメンテナンスを目指す動きも出ている。そしてここ数年、世界的に注目される「インダストリー4.0」や「インダストリアル・インターネット」といったコンセプトも、センサーネットワークが技術基盤の1つになっている。
さらに近年では、生活シーンにセンサーネットワークシステムを組み込むことで、より快適な生活シーンや省エネに優れたスマートホームの実現も期待される。
実際に海外では、センサーネットワークとビッグデータ解析、AIを組み合わせた仕組みが実現しており、日本でも家電業界や住宅業界などからのアプローチが見られるようになった。例えば、エネルギー業界と家電業界、一般家庭を融合したビジネスモデルも創出されており、新たなビジネススキームも拡大しつつある。
トリリオンセンサー構想のインパクト
2013年4月に開催された「トリリオンセンサーサミット」で明らかにされたトリリオンセンサー構想について記載する。
トリリオンセンサー構想によれば、2023年までに全世界で毎年1兆個のセンサーが供給される世界を実現するため、「食糧、エネルギー、水、医療」といった、地球規模の課題解決に向けたサービステクノロジーとモノの供給とが均衡する「潤沢な世界」の実現を目標に掲げている。
そしてサービステクノロジーには、バイオ、人工知能、ロボティクス、デジタル製造などの分野が対象に挙げられ、その用途は環境計測(大気汚染、水質モニタリングなど)や健康管理、廃棄物管理に至る、多岐にわたる分野でのセンサー活用強化が見込まれる。
同サミットでは、20年かかるといわれる新型センサーの開発期間の短縮を狙い、超大量センサー用途にかかわる未来像を描くためのロードマップ作りも行った。例えば、用途に合致するセンサー候補を絞り込み、製造プラットフォームの標準化に取り組むなど。
この取り組みが成功すれば、各種データ取得に必要なセンサーの量産体制を実現できる。そうなれば、従来のコスト構造ではセンサーネットワークシステムの導入が難しかったコンシューマー向けや、流通業・サービス業向けのアプローチも可能になり、センサーネットワークビジネスの裾野が格段に広がる蓋然(がいぜん)性が高まる。
センサーネットワークビジネスは社会インフラ化する
センサーネットワーク・IoTが目指すのは、ビッグデータやデータ解析/アナリティクス技術も生かした、広義の「スマートコミュニティー/スマートシティー」である。
そこではエネルギー利用の効率化/省エネ対応だけでなく、インフラや防災、ヘルスケア、都市交通、農林水産業など、多様な領域が有機的に連動した仕組みとすることで、より快適な社会を目指している。このような社会を目指す中でセンサーネットワークは、末端情報の収集といった役割を担っており、スマートコミュニティー/スマートシティーにおける重要な基盤技術として社会インフラ化すると予想される。
センサーネットワークの本格普及までには、解決しなければならない課題も少なくない。コスト面や無線通信技術、低消費電力ネットワーク・デバイス開発、標準化、耐久性問題など、さまざまな課題がある。しかし世界的に技術開発が進展する中、2020〜2025年にかけて実用テーマや成功事例が増え、その普及は加速していくと予想する。
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