IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題(1)
デジタルとリアルがつながるIoTの世界では、サイバー攻撃でヒトの命も狙える!?(2/2 ページ)
さて、実世界とサイバー世界がつながることで起こり得るリスクについて、身近な列車制御システムを例に考えてみよう。
鉄道信号保安システム、列車検知・列車制御のためのシステム全般を指す言葉だが、例えば「ATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)」や「ATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)」などの名前を聞けばピンと来る人もいるかもしれない。これらは大勢の乗客を乗せて運行される列車を安全に運転するための仕組みで、日本では一般的だが海外では導入されていないため事故も少なくない。
前段で説明したように、実はこうした事故をサイバーの世界から引き起こすことも不可能ではないのだ。言い換えれば、「サイバーテロで人を殺せる」ということになる。
とはいえ、これらの事故は運転士が適切に列車の制御を行うことができるなら大きな問題にはならない。つまり、多重化された安全装置はいずれかが機能しなくても、残りの手段で安全に制御(例えば、停止する)できれば、尊い人命を失わずに済むわけだ。これは、列車自体を外部から制御できる安全システムATC/ATSだけでは守り切れない場合があるものの、列車を適切に制御できればよいのである。
これは、サイバーセキュリティの世界でいう「多層防御」でもある。
ITシステムのセキュリティと何が違うのか?
人の生死に関わる列車事故を引き合いに出したのには理由がある。サイバーの世界だけで閉じているのであれば、人を殺すのは難易度が高い。これはサイバーの世界だけで閉じているからで、IoTはそれをリアルな世界の何かとつないでしまっているために、単純に再起動すれば問題が解決できるわけではないのである。
以前からよく引き合いに出されるのは自動車だろうか。いや航空機も、大型船舶も同じと考えていい。サイバー、つまりコンピュータシステムを操ることができれば現実世界に大きな影響を与えることができ、人の生死をもてあそぶことができる。自動車は既にコンピュータシステムが内蔵されており、これを外部から操作できれば高速道路で事故を起こすこともできるし、運転者や搭乗者の命を奪うこともできるだろう。タンカーや旅客機で事故が起きたらそれこそ大災害である。ここがIoTとITのセキュリティ上の大きな違いといっていいだろう。
これは現在稼働している工場やプラントなども同様で、コンピュータシステムが採用され、自動化が進んでいるものは“リスク”を秘めている。コンピュータがネットワーク接続されて制御を行い、それらがインターネットに接続されていないとしても、リスクが存在することになる。
ということで、「ネットワーク化されたコンピュータによる制御システムのセキュリティ」が今回の連載のテーマである。次回は、特に工場やプラントなどを対象にしたIIoTについて、今までの工場やプラントとの違いや、どこがIoTなのか、また制御システムとIIoTやOT(Operational Technology)の違いについて述べたいと思う。 (次回に続く)
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IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題
デジタル(サイバー)世界と現実世界を橋渡しする「IoT(Internet of Things)」の仕組み。その可能性や利便性についての話題は尽きないが、IoTのセキュリティリスクに関してもしっかりと情報収集し、対策を講じるべきである。本連載では、工場や重要インフラで利用されつつある「インダストリアルIoT(IIoT)」の世界に着目し、IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題について解説する。
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