IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト(3)
ソフトウェアテストの手法と施策(前編) テストの分類(5/5 ページ)
同値分割が困難な理由
同値分割法が困難なテストになるのは、人間の例でも紹介したように同値分割の基準がいろいろとあり、この基準を自ら発見し、選択しなければいけないことである。しかし有効系同値(正常処理の中で出てくる同値)の発見はそれほど難しくはない。素直な同値類の発見であれば、テスト初心者でも可能である。
正常処理についてはドキュメントに比較的ちゃんと書かれているからであり、適度な抽象度で適度に捨象して、抜け漏れも少なくなっているからである。もちろん、正常系処理でさえ、まともに書いていない推理小説のようなドキュメントもあるので、注意する必要がある。
問題は異常処理(例外処理、エラー処理)などの無効系同値に関するテストである。無効系に関しては、書き方がばらばらであり、あるところでは異常に細かい粒度で微に入り細に入り書かれているかと思えば、あるところでは全く書かれていないことがある。
これは書き手が当たり前だと思う例外処理は書かれていないからであり、この結果、ドキュメントから無効系同値分割をするのは至難の業になる。どのような無効系同値があるかを見つけるためには、推理と洞察が必要になり、ときには妄想すら必要になるかもしれない。
人間を例にして無効系の同値分割をしてみる。例えば、国籍で同値分割をしたときに、無効系同値の候補としては、「多重国籍」と「無国籍」である。まずはこの2つに分ける。しかし単なる入力間違いで、存在しない国を入れるかもしれないので「存在しない国籍」というのも無効系同値の候補になる。
また多重国籍の多くは「2重国籍」であり、これと「3重以上の国籍」と分けるのも手である。さらに多重国籍はある年齢に達するまでに選択することで多重国籍でなくなる場合もある。これを「年齢条件付多重国籍」と同値分割するのもいいだろう。他にもいろいろな観点や基準で無効系同値分割ができる。しかしこれらはドキュメントには書かれていない場合は推理して発見する必要がある。
図2の例では英語と日本語の両方を話せない人を同値分割している。両方話せない人は他の言語のみを話せる人か、言葉を発せない乳児か、それとも既に死んでいる人なのか、その他の理由があるのかで同値分割している(図2の右下の図)。それとも人間の中に宇宙人がいる可能性もあるかもしれない。
ここまでブラックボックステストの基本である同値分割法について、少し詳しく見てきた。次回はブラックボックステストの分類の続きと、テスト手法の選択について、見ていくことにする。
著者紹介
五味 弘(ごみ ひろし):OKI(沖電気工業) シニアスペシャリスト、エバンジェリスト。博士(工学)。
ソフトウェアの開発支援・教育に従事。電子情報技術産業協会(JEITA)専門委員会の委員長や情報処理振興機構(IPA)などの委員など。情報処理学会(シニア会員)。三重大学などの非常勤講師やリサーチフェローも務める。IoTやAI時代のソフトウェア開発の知見融合が関心事。
著書に『はじめてのLisp関数型プログラミング』(技術評論社、2016年)、共著書に『IoTセキュリティ』(日経BP社、2016年)、『定量的品質予測のススメ』(オーム社、2008年)、『プログラミング言語論』(コロナ社、2008年)などがある。雑誌執筆や講演なども多数。著者の個人サイトはhttp://gomi.info/。
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IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト
言うまでもなくソフトウェアテストは重要だが、IoTやAIなどの新しい概念によってソフトウェア自体の在り方が変わりつつある中、旧来からのテストを踏襲するだけでは成果は得られない。新時代のソフトウェアテストについて、考察する。
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