宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(122)
狙われるのは人間の心 義務感や焦りを巧妙に突くサイバー詐欺の手口(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もはや無関心ではいられない情報セキュリティ対策。今回は、技術的な防御策では防ぎ切れない「人」を狙うサイバー詐欺について考えます。攻撃者は脆弱(ぜいじゃく)なシステムではなく、人間の焦りや義務感、親切心を巧みに突いてくるのです……。
いかさま、ゴト師、ペテン……。歴史上、最初の詐欺がいつ起きたのかは分かりません。しかし、有史以来、人類は詐欺と闘い、また詐欺を行ってきました。今後も詐欺という犯罪がなくなることはないでしょう。
ITの世界はこれまで、ヒューマンエラーや機器の故障、ソフトウェアのバグと闘ってきました。しかし21世紀に入ってからは、意図せず作り出してしまった脆弱(ぜいじゃく)性を悪用する攻撃に加え、システムそのものではなく、それを扱う人を狙い、システムを攻略する詐欺も無視できない攻撃手法となっています。
例えば「フィッシング」は、利用者そのものを標的にした攻撃です。例に挙げるまでもなく、昨今では日本企業がフィッシング詐欺の被害に遭い、多額の損害を受ける事例が相次いでいます。
私たちはまだ、ITの世界にもやってきた詐欺に対して、うまく対応できていないように思えます。そこには決め手となるような対策はあるのでしょうか。筆者は、こう考えています。
メール、電話、Webサイト――あらゆるポイントからやってくる「詐欺」
従業員の立場であっても、さまざまな詐欺に遭遇する可能性があります。メールやWebサイト、そして最近では電話まで使われ、その手口は実に多彩です。こうした攻撃は「フィッシング(Phishing)」と呼ばれ、語源は魚釣り(fishing)と洗練(sophisticated)を組み合わせたものだといわれています(諸説あり)。
これまでフィッシングといえば、偽物から送られたメールに記載されたURLをクリックし、その先でログインパスワードなどを入力してしまう手口をイメージしていた方も多いでしょう。しかし現在は、本物そっくりのWebサイトが検索結果の上位に表示され、誤ってアクセスしてしまうケースもあります。そして、その先でソフトウェアをダウンロードさせられ、情報を盗まれることも……。
また、動画サイトを見ていたらアップデートが必要だと表示されてだまされるパターンや、メールのやりとりを盗聴された上でその会話に入り込まれ、自然な形で振込先変更へ誘導される「ビジネスメール詐欺(BEC)」もあります。突然全画面で偽のサポートセンターへの連絡を促す「偽セキュリティ警告詐欺(サポート詐欺)」、さらには社長や警察の声を生成AIで作り出し、電話で振り込みを指示する「CEO詐欺」など、その手口は枚挙にいとまがありません。
加えて最近では、チャットをはじめとするコラボレーションツールを悪用する事例も増えています。皆さんのところにも、社長などの名前をかたり「至急LINEグループを作り、私だけにQRコードを送れ」といった指示が届くことがあるかもしれません。LINEだけでなく、ビジネスで利用されるチャットツール全般で同様の詐欺が行われていることに注意してください。
ITの世界にも入り込んできた詐欺は手法が多岐にわたり、それぞれに個別対応することは容易ではありません。メール、Web、電話など入り口もさまざまです。
メールの信頼性を高める対策として、「BIMI」と呼ばれる、正規のメールに企業ブランドやサービスのロゴアイコンを表示する仕組みが登場し、企業側も「正しいメールにはアイコンが表示されます」とアピールし始めています。Webサイトについても「ブックマークからアクセスしてください」という対策が考えられます。
ただし、これらの対策は、「何が正しいのか」を知らなければ意味がありません。また、このような「本物と偽物を見分けるゲーム」にも限界があります。
筆者は、フィッシング対策として「怪しいところを見抜き、気を付けましょう」だけでは十分ではないと考えています。同じ気を付けるにしても、別の方向から注意を向けることが重要です。正しく怖がることこそが、こうした詐欺への対抗手段になるのではないでしょうか。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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