大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
NVIDIAがGroqを「事実上」買収 CUDA Tileが示す次の一手とは(1/3 ページ)
2025年12月、GroqとNVIDIAが非独占的なテクノロジーライセンスの契約を結んだというニュースが発表された。これはNVIDIAによる、事実上のGroqの買収である。NVIDIAの狙いは何なのか。「CUDA」の課題や、新アーキテクチャ「CUDA Tile」の解説を交えて考えてみたい。
NVIDIAがGroqを「事実上」買収
2025年12月25日、GroqがNVIDIAとの間で非独占的なテクノロジーライセンスの契約を結んだというニュースが突如発表された。ただ文面を読むと、確かにNVIDIAはGroqのInference向けTechnology Licenseを入手したが、これに加え
- Groqそのものは引き続き独立企業として運営される
- GroqのCEOには、それまで同社の最高財務責任者(CFO)を務めていたSimon Edwards氏が就く
- Groqの創業者兼CEOだったJonathan Ross氏や社長を務めていたSunny Madra氏らのGroqの主要メンバーはNVIDIAに加わる
事も発表されており、これは事実上のNVIDIAによるGroqの買収である。Groqが独立企業として残されたのは、既に同社はTSP(Tensor Processing Unit)を2020年に発表しており(図1)、これの販売に加えてGroqCloudと呼ばれるクラウドサービスを提供(現在はこちらがメイン)しており、既に顧客も多数獲得している。NVIDIAとしては独占的なライセンスを結ぶと、こうした顧客のサポートまで背負い込むことになる訳で、それを嫌ったのだろう。さらに言えば、Groqが現在提供しているLPUというかTSPそのものを利用したい訳ではない、という事もここから読み取れる。欲しかったのは技術と人、という事が推察できる。
ちなみに本件はNVIDIAのサイトには一切掲載が無い。そしてCNBCの報道によれば、今回の買収費用はおよそ200億米ドルだったと報じている。本件は既にITmedia NEWSとかITmediaビジネスオンラインなどでも報じられているが、NVIDIAがGroqのキーパーソンを引き抜いた目的そのものは(NVIDIAが本件にコメントを出していない事もあって)明確にはなっていない。もちろん筆者も真の目的が分かっている訳ではないが、何となく目的が推定できるというか仮説があるので、これをご紹介したい。
NVIDIAの成長を支えてきた「CUDA」
今回の買収に先立つ2025年12月4日、NVIDIAはCUDA 13.1で新しくCUDA Tileと呼ばれる新API(というか、新アーキテクチャ)を発表した。このCUDA Tile、NVIDIAによれば「2006年にCUDAを発表して以来の最大の拡張である」(NVIDIAのニュースリリース)そうだが、そう言うだけの違いがある。
CUDAはご存じのように、もともとはGPU(Graphics Processing Unit)に汎用的な処理を行わせるためのAPIであり、なのでCUDAの実装に当たってはGPU側にも汎用的な工夫(さまざまなデータ型のサポートやGraphics以外の演算のサポート、制御機能など)を追加している。もっともGraphicsの方もその後、どんどん描画能力に対する要求が高まってきた事で、固定的な描画処理だけでなく自由に描画処理を変えられるように仕様が変更され、これに向けてProgrammable Shaderというものが登場して、CUDAの有無にかかわらずGPUは汎用的な使い方ができるようになった。APIとしてもCUDA以外にOpenCLというAPIも出て来て、こちらは複数のメーカーのGPUとCPUで共通に使える仕組みになっており、CPUとGPUを(性能こそ違うものの)同等のデバイスとして扱えるようになった。
話をCUDAに戻すと、そんな訳でGPUを汎用的に利用可能となり、実際2012年以降のCNN(Convolution Neural Network)が急速に発展した時期、研究者はいずれもCUDAを使ってGPU上にCNNの実装を行っていた。そしてAI需要の急速な盛り上がりを受けてNVIDIAも2017年にCNNを高速化できるTensor CoreをV100 GPUに搭載することで、急速にNVIDIAのGPUがAIの利用に欠かせない事になり、現在のNVIDIAの興隆につながっている、というのは多分に端折りすぎる部分はあるものの間違ってはいない。ただそんなNVIDIAというかCUDAは、もともとのGPUのアーキテクチャに影響を大きく受けており、処理方式はSIMT(Single Instruction, Multi Thread)構成となっている。まぁこれはCUDAが、というよりも現在のGPUがそもそもSIMT的な構造で作られており、これを利用するためのライブラリであるCUDAも当然SIMT的な記法になるのは当然の事である。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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