宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(108)
システムの可用性を見直すなら……まずは「バックアップ」だ!!(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。今回は、滋賀県・湖南市の住民情報システムのトラブル事例を基に、システムの可用性について考える。
先日、気になるトラブル報告が目にとまりました。滋賀県・湖南市の住民情報システムに不具合が発生したというものです。それ自体は「よくあるトラブル」と言ってしまえば失礼かもしれませんが、数日で復旧した内容でした。
注目すべきは、その原因です。以下に引用します。
ハードディスク11台のうち2台のハードディスク(メイン1台、予備1台)が故障し、本市の住民情報システムが停止しました。
本来であればメインのハードディスクが故障した場合、自動で予備ディスクにデータが移る構成となっておりましたが、予備ディスクへのデータを移行中に、その予備ディスクも故障し、サーバーへの通信ができなくなったことによりシステムが停止しました。
ITに少しでも詳しい方であれば、湖南市のこのトラブルが人ごとではなく、同情を誘う内容であることが分かるのではないでしょうか。そこで今回は、この事例を参考に「システムを守る」ということについて考えていきたいと思います。
可用性を高めるための方法が裏目に?
湖南市で発生した事象は、「RAID」と呼ばれるHDDの冗長性を高める仕組みが、うまく機能しなかった事例だと推測されます。
もはやPCでは「SSD」が主流で、「HDD」を内蔵した製品は少なくなっていますが、データセンターにおいては、大容量を扱えるHDDが一般的です。HDDは可動部分を持つため、故障を前提とした消耗品として扱う必要があります。そのためRAID技術を活用し、1台のHDDが故障しても、正常なものに差し替えることで、無停止で運用できる仕組みを取り入れることが重要です。
湖南市では、その差し替え作業を自動化するために、あらかじめスペアディスクを組み入れた構成で運用していたようです。通常であれば、物理的に故障したHDDを自動で切り離し、スペアディスクに切り替える運用が行われるはずですが、そのスペアディスクも故障してしまった――という、大変不幸な状況だったと考えられます。
「本当にそんなことがあるのか?」と思われるかもしれませんが、同時期にHDDを運用開始した場合、同一ロットの製品が使われることが多く、故障時期が重なるケースも少なくありません。そのため、今回の事象は「比較的よくあること」ともいえ、報告が公開された際に多くのエンジニアが同情したのも、こうした経験則を持っていたからでしょう。
このように、システムの可用性を高めるための対策が、かえって可用性を損なう結果になってしまうこともあります。システム運用には、技術だけでなく経験や勘も求められるのかもしれません。もしかするとその感覚は、製造業の皆さんの方がよく理解されているかもしれませんね。
可用性が最も重要だから
セキュリティでは「CIA」を基本原則としています。これは以下の3つの要素から構成されており、かつてはこの順番で重要視されていました。
- 秘匿性(Confidentiality)
- 完全性(Integrity)
- 可用性(Availability)
しかし最近では、この順番が変化しつつあります。企業組織において最も重要なのは、やはり「可用性」ではないでしょうか。そのため、CIAではなく「AIC」と表現されることも増えてきたように思います。筆者もこれには同意しています。秘匿性や完全性は、クラウドや各種ツールを活用することである程度は確保できますが、可用性だけはしっかりと考えなくてはなりません。これもまた、製造業に従事される皆さんであれば、より理解できることなのではないかと思います。
システムにおける可用性は、システム管理者やセキュリティ担当者、加えて経営者に任せてしまってもよい部分かもしれません。ただ、筆者の個人的な意見としては、従業員である皆さん自身も少しずつ関心を寄せてほしいと感じています。
個人レベルでの可用性の向上――。その第一歩となるのが「バックアップ」です。
皆さんは、目の前にあるPCや自宅のPCを最後にバックアップしたのはいつでしょうか? 中には一度も行ったことがないという方もいるかもしれません。バックアップは、実際にデータを失ってみないとその重要性が理解しにくく、失ってからではもう元に戻せないという、ある意味“難しい技術(?)”です。もしかしたら「自分には重要なデータなんてないよ」と思っている方もいるかもしれませんが、今やスマートフォンは人生の「アルバム」であり、「アドレス帳」であり、「日記」でもあります。それら全てが一瞬で消えてしまったとしたら、日常生活に支障を来す可能性さえあるのです。
だからこそ、転ばぬ先のつえとして、やはりバックアップが重要なのです。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
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