宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(94)
セキュリティへの関心が低い経営者の考えを180度変える方法(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。セキュリティへの関心が低い経営者に対策の必要性を理解してもらうには、それが経営上のリスクになり得ることをしっかりと認識してもらう必要がある。今回はその説得に役立つレポートを紹介する。
インシデントが発生するとお金がかかる――。この認識はあらためて述べる必要もない“当たり前のこと”だと思います。しかし、それでもなお対策が遅れているというのは、まだそれが“腹落ちできる状況になっていない”から……ともとれます。
先日、あるセミナーで、書籍『CISOのための情報セキュリティ戦略――危機から逆算して攻略せよ』や『CISOハンドブック――業務執行のための情報セキュリティ実践ガイド』の著者である高橋正和氏が「経営者はセキュリティを理解していないように見えても、“リスクには敏感だ”」と述べていました。
要するに、これまでセキュリティにあまり関心のなかった経営者でも、一度セキュリティの話題が「自社にとってのリスクである」と認識できた瞬間、セキュリティに対する考え方が180度変わる可能性があるのです。
そのためには、現場の話を、経営者の視点でリスクとして認識できるよう、説得する話術や資料が必要となるはずです。実際に、その一助となるようなレポートが公開されているのでご紹介したいと思います。
インシデントが実際にどの程度の“損害”を発生させるか?
今回紹介するのは、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)が発表した最新の「インシデント損害額調査レポート 第2版」です。
このレポートでは、もはや当たり前である「インシデント発生=損害額の発生」ということからもう一段掘り下げて、どのようなことに、どのくらいの金銭的対策が必要か、などが淡々と述べられています。
レポートとしての質が非常に高く、経営者も現場も、あらゆる業種/業態の人にも響く内容になっていると感じます。また、冒頭のエグゼクティブサマリーを一読すれば、「時間を作ってでも全文を読まなければならない!」と思わせる内容であることがよく分かります。
今回、このレポートの存在を読者の皆さんにお知らせしたかったのは、やはり日本においては「製造業」がこれらのインシデントと密接に関連しているからです。なお、本レポートの別紙としてまとめられている「被害組織調査」には、ランサムウェアの被害件数(171件)のうち、43%に当たる73件が製造業をターゲットにしていたことが記されています。
このレポートでは、製造業が狙われる理由を断定していませんが、「攻撃者は身代金を得ることを目的としており、より脅しのきく相手をターゲットにすることが考えられます。その意味で、“完成品メーカーに迷惑を掛けてはならない”という心理が働く、原材料メーカーや部品メーカーなどがターゲットになり得ると推察できますが、実際のところは攻撃者のみぞ知る……」といったことが書かれています。
これは攻撃者の心理を考えても説得力があります。おそらく、初期の攻撃を“ばらまき”型として無差別に行ったとしても、次の攻撃候補を絞る際、上記のような心理で製造業を選択する可能性は十分にあり得ます。
その結果、システムの復旧だけにとどまらない、さまざまな損害につながっていく……ということが、このレポートの主題となります。対応のためのコールセンター設置や超過人件費、見舞金のようなすぐに必要となるコストだけでなく、損害賠償金や個人情報法における行政損害など、もしかしたらすぐには認識できない損害もあるかもしれません。
これらのコストは、今、事前にできる対策を少しでも進めていれば、もっと下げることができるものかもしれません。もちろん対策にもお金がかかりますが、そのコストと被害による損害額とを比較して示すことができれば、セキュリティに関心のなかった経営者でもすぐに“リスク”として認識をあらためるに違いありません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界の脱炭素はなぜ進まない? 実務で直面する“壁”の乗り越え方 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収するには? エネルギー&CO2削減の成果を出す秘訣 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
計測器アプリケーションにおいて7.5桁の精度を実現する方法
-
3
ものづくり白書2026を読み解く
-
4
ChatGPT Enterprise活用ガイド:業務時間を1万7600時間削減したMIXIの事例も
-
5
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
6
AI×DXで効率化する設備保全まとめ
-
7
「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは?
-
8
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
9
脱炭素投資をすぐ回収するには? エネルギー&CO2削減の成果を出す秘訣
-
10
動き出したファナックの「フィジカルAI」
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー