大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ChatGPTで盛り上がるクラウドAIサービスとAIプロセッサ(2/3 ページ)
RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)というのがその方式であるが、実際には
(1) 教師付きのファインチューニング
(2) Reward Model(文章の「良さ」を評価するモデル)を生成
(3) RLHFを利用して、(2)を評価
というステップを踏む。ここで(2)と(3)をループ(まずReward Modelを生成し、それを基にRLHFを行ってReward Modelを改良、再びRLFHを行い……)させる事で、モデルの精度を向上させていくという方式だ。GPT-3をベースにこの人間のフィードバックを組み込んだモデルはInstructGPTとして2022年3月に発表された。ChatGPTでは、このInstructGPTをベースに、モデルをGPT-3.5にした上で、さらに対話形式とし、かつ会話データをRLHFに利用していると考えればよい。
さてここで再び計算量の問題が出てくる。もともとのGPT-3のパラメータも膨大だが、(2)に出て来たReward Modelも、InstructGPTの場合はパラメータ数60億個のGPT-3を利用して実装されている。これだけの規模になると、もちろんGPT-3本体モデルの学習に比べればずっと容易とはいえエッジAI向けのシステムでどうにかできるレベルではなく、クラウド上で処理を行うしかないのが実情である。
これはStable Diffusionも同じである。Stable Diffusionというのは通称であり、論文ではLDM(Latent Diffusion Model)と呼ばれているが、こちらは拡散モデルと逆拡散モデルの組み合わせで生成されており、もちろん学習は必要ではあるのだが、ChatGPTに比べればずっと頻度は少ない。その代わりと言っては何だが、ひたすら繰り返し処理が必要になる。例えばStable Diffusionの初期値の場合、拡散モデルでは1000回の繰り返し処理が実施されている(逆拡散も当然同じ回数必要)ため、こちらも計算量は決して少なくない。また、既存のモデルを使う限りにおいては処理を軽減できる(実際スマートフォンでも現実的な速度で実行できるモデルが今年のMWCでデモされていた)が、全くこれまでと異なる画像を扱いたいとか、高精細な画像を出力したい(標準だと512×512pixelでしかない)といった場合にはまだまだエッジAIで処理できるレベルではない。
もちろんクラウドプロバイダーからすれば、こうした負荷の高いAI処理はクラウドを利用してもらうための良いアプリケーションであるわけなので囲い込みを図りたいのは当然である。ChatGPTの開発元であるOpenAIは、無償で利用できる(ただし利用頻度に限度のある)プラン以外に有償プランも示しており、ビジネスなどで本格的に使う場合にはこちらの有償プランに誘導される形になる。ただ、これを割安と思うか割高と思うかは、どういう使い方を想定しているかで変わってくる。明示されている価格リストは、大量ディスカウントとかはなく利用量(厳密に言えば利用トークン)に比例する形で課金されるので、小規模な利用であればあまり課金は大したことはないが、爆発的に利用量が増えると課金も爆発的に増える。こうなってくると、ある程度利用量が増えるようならオンプレミスで稼働させるという選択肢も視野に入ってくるだろうし、そもそもクラウドで実行する場合はそれがどんなAIプロセッサで実施されるかを選択する事はできない(そういう事を考えなくても使える、というのがクラウドのメリットでもあるので、この辺の損得勘定は難しいが)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー