宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(81)
2023年、セキュリティは他社より半歩だけ先に行け(2/2 ページ)
ランサムウェア対策というのは、実はそう難しいことではないと思っています。ランサムウェアと言っても、メールに添付されたファイルとして、暗号化を行うランサムウェアそのものが入っていることはまれで、まずは端末を乗っ取るマルウェアが感染し、その後ネットワークを調査し情報を奪った上で、最後にランサムウェアが「暗号化」や、「消去」を行う流れになっています。つまり、マルウェアをクリックしてしまった後、ほんの少しは猶予があります。私たちはこの時点で検知でき、対策を打てれば、攻撃者の最終目的をつぶすことができるのです。この検知の機能として注目を集めているのがEDR(エンドポイントにおける検知と対応)製品です。
JASAの説明では「身代金目的で情報窃取や暗号化を実施し、脅迫するサイバーランサムの流行に対して、被害者側の人災だとみなされないよう、あらためて基本的な対策の実施を求める」と述べています。EDRがなくてもできることはあり、例えばマルウェアが悪意ある行動ができないよう、基本的なアップデートが行われていること、アカウントに適切な権限設定がされており、悪意あるものが行動できないようになっていること、そしてパスワードが強化されており、使いまわされていないことなどが対策になり得ます。これらはソリューションの課題というよりも、システム管理者が利用者に徹底できているか、それを経営者がしっかりと支えているかということが大きな課題です。だからこそ、JASAは「ダメ経営者」という表現をしているわけです。
しかし、これは経営者やシステム管理者だけの課題ではなく、最終的には組織に属する全ての従業員が、これらの重要な基本的対策を理解し、実践することこそが本当の課題です。2023年は人任せにせず、自分ごとと考えてセキュリティを考えていく必要があるでしょう。
2022年のインシデントを自分ごとに
2022年は象徴的な事件が発生しました。おそらく皆さんも心に残っているであろう、2022年2月28日に発表されたトヨタ自動車の工場操業停止は、仕入れ先である小島プレス工業におけるシステム障害を起因としていました。また、大阪急性期・総合医療センターで発生した電子カルテシステムの障害は、ネットワーク接続している給食委託事業者から侵入されたとしています。どちらも、日本国内で発生した、まごうことなきITサプライチェーンにおけるインシデントです。
さまざまなサイバー事件は海外の事例をピックアップすることが多かったと思いますが、もうすぐそこまで攻撃の波がきています。おそらく、どちらの事件もきっかけはサイバー攻撃者により、攻撃可能な端末を順番に攻撃したことだと思います。それがたまたま大企業の取引先であっただけだとすると、私たちが取るべき対策は完璧なセキュリティを実現するのではなく、「他社よりも半歩先のセキュリティ」なのかもしれません。攻撃者の侵入を許したとしても、その先のステップでつまづかせることができれば、攻撃者はより簡単に侵入できる他の会社に行動を移すでしょう。その半歩先の努力がいま、求められているのだと思います。
それが一体なんなのかというのは、組織によって変わってくると思います。その努力を行うことこそ、「やり手のシステム管理者」や「優れた経営者」となるポイントであると、私は考えています。
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
» 制御システムの「安全神話」は既に崩壊している
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著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さんに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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